・・・梅雨があけると生国魂神社の夏祭が来る、丁度その宵宮の日であった。喜美子が教えていた戦死者の未亡人達が、やがて卒業して共同経営の勲洋裁店を開くのだと言って、そのお礼かたがた見舞いに来た。 道子がそのひと達を玄関まで見送って、部屋へ戻って来・・・ 織田作之助 「旅への誘い」
・・・聖ヨハネ祭の夜宮には人形のリザが、その花の中でいい夢を見てねむるんです。 こんなふうにおもしろく、二人は苦労もわすれて歩きました。もう赤楊の林さえぬければ、「日の村」へ着くはずでした。やがて二人は丘を登って右に曲がろうとすると、そこにま・・・ 著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎 「真夏の夢」
・・・そうだ、あしたの晩、おい文学者、俺と一緒に八幡様の宵宮に行ってみないか。俺が誘いに来る。若い者たちの大喧嘩があるかも知れないのだ。どうもなあ、不穏な形勢なんだ。そこへ俺が飛び込んで行って、待った! と言うのだ。ちょうど幡随院の長兵衛というと・・・ 太宰治 「親友交歓」
出典:青空文庫