・・・今夜こそは徹底的に父と自分との間の黒白をつけるまでは夜明かしでもしよう。父はややしばらく自分の怒りをもて余しているらしかったが、やがて強いてそれを押さえながら、ぴちりぴちりと句点でも切るように話し始めた。「いいか。よく聞いていて考えてみ・・・ 有島武郎 「親子」
・・・それに反して、女房ユリアが夜明かしをして自分で縫った黒の喪服を着て、墓の前に立ったと云うのは事実である。公園中に一しょに住んでいただけの人は皆集まっていて、ユリアを慰めた。その詞はざっとこんな物であった。「神の徳は大きい。お前さんをいじめた・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
出典:青空文庫