・・・「あなたは、青木大蔵さん。そうですね。」「ええ、そうです。」青木大蔵というのは、私の、本来の戸籍名である。「似ています。」「なんですか。」私は、少し、まごついた。 郵便屋は、にこにこ笑っている。雨に濡れながら二人、路上で・・・ 太宰治 「新樹の言葉」
・・・ たとえば今の日本政府にていえば、大蔵の官吏、必ずしも経済学を執行したる者に非ず、文部の官吏、必ずしも教育論を研究したるに非ざるも、その実際に事のあがるは今日の如し。ひっきょう、経世は活学にして、当局者が局にあたりて後の練磨なり、決して・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
第一私どもの目からみると議会内の大蔵委員会という重要な新給与予算の委員会席上で、あんなに酔うほど酒がでるということがそもそもひどいことだと思います。なにもうちでのめない連中ではなし、ごあいきょうの程度をこえています。公務員・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・卑近な実例で、大蔵次官が収賄して下獄した。ああなるまでにもし彼の細君がはっきりくりかえして、わたしたちの家庭に、いかがわしい洋服はいりません。みそ醤油なんぞまでもらうのはあんまりだから、いやです。といったら、どうだったろうか。 大蔵委員・・・ 宮本百合子 「今年のことば」
・・・ 石橋湛山氏が大蔵大臣として、インフレーションの、恐しいこの時期に、ラジオ放送して、幼な児の如くならずんば天国に入るを得ず、というようなことをいったのは純潔と反対のことであった。大臣という立場は、全人民経済生活の具体的解決を責任としてい・・・ 宮本百合子 「社会生活の純潔性」
・・・と平気で放送する石橋湛山大蔵大臣というものを頂いている金もちたちの心には、人民の精神の要求は決して通じないであろう。それはその人々に、自覚されることのない人間性の一つの発露なのである。戦争に協力した営利出版企業が今日また再び、独占資本的な活・・・ 宮本百合子 「文化生産者としての自覚」
出典:青空文庫