・・・女の太政大臣、女の検非違使、女の閻魔王、女の三十番神、――そういうものが出来るとすれば、男は少し助かるでしょう。第一に女は男狩りのほかにも、仕栄えのある仕事が出来ますから。第二に女の世の中は今の男の世の中ほど、女に甘いはずはありませんから。・・・ 芥川竜之介 「二人小町」
・・・増鏡巻五に、太政大臣藤原公相の頭が大きくて大でこで、げほう好みだったので、「げはふとかやまつるにかゝる生頭のいることにて、某のひじりとかや、東山のほとりなりける人取りてけるとて、後に沙汰がましく聞えき」という事があって、まだしゃれ頭にならな・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・而してその相撲の大関または碁将棋の九段なる者が、太政大臣と同一様の栄誉を得ざるは何ぞや。相撲と碁将棋とは、その事柄において、これを政事に比して軽重の別あるがゆえに、その軽重の差にしたがいて、双方の長と長と比肩するを得ざるものなりといえども、・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・この時にはすぐにやめたが、十五年後四十五歳の時にふたたび関白太政大臣となり、さらに六十五歳の時三度関白となった。しかしそういう地位からばかりでなく、その学識の点において、応永、永享の時代を代表するに足りるであろう。彼の眼界は、日本、シナ、イ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫