・・・の女主人公金定等は悉こう言う女傑である。更に「馬上縁」の女主人公梨花を見れば彼女の愛する少年将軍を馬上に俘にするばかりではない。彼の妻にすまぬと言うのを無理に結婚してしまうのである。胡適氏はわたしにこう言った。――「わたしは『四進士』を除き・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・それというのも奴さんも奴さんだが、奴さんのおふくろというのが俗にいう女傑なんで、あれでもなしこれでもなしとさまざま息子の嫁を探したあげく、到頭奴さんの勤めている工場の社長の家へ日参して、どうぞお宅のお嬢さんを伜の嫁にいただかせて下さいと、百・・・ 織田作之助 「天衣無縫」
・・・走した女のひとたちはもとより少くなくて、それらの婦人たちは歴史の波瀾のうちに生死をも賭したのであったが、総ての時代を通じて印象を辿ってみると、日本の婦人一般にとって政治的な活動をする婦人は、すぐ一種の女傑になってしまって、家庭生活を中心に朝・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・にしろ、「女傑の村」にしろ、盲目の女の子を語る「赤いステッキ」、子供の労働を、ひとりでにいつか遊戯と絡まり合う自然の姿で描いた「桃栗三年」、不幸だった女がみかん畑の日雇い婆さんで暮している晩年に、ふとあったかい人生の道づれを見出す「三夜待ち・・・ 宮本百合子 「壺井栄作品集『暦』解説」
出典:青空文庫