・・・いわゆる社会政策と称せられる施設、温情主義、妥協主義の実施などはすべてそれである。これらの修正策が施された後に、社会主義的思想ははじめて実現されるわけになるのだ。それならば社会政策的の施設する未だ行なわれようとはしなかった時代に、何を苦しん・・・ 有島武郎 「広津氏に答う」
・・・しい眼元に俊雄はちくと気を留めしも小春ある手前格別の意味もなかりしにふとその後俊雄の耳へ小春は野々宮大尽最愛の持物と聞えしよりさては小春も尾のある狐欺されたかと疑ぐるについぞこれまで覚えのない口舌法を実施し今あらためてお夏が好いたらしく土地・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・ それで火災を軽減するには、一方では人間の過失を軽減する統制方法を講究し実施すると同時に、また一方では火災伝播に関する基礎的な科学的研究を遂行し、その結果を実地に応用して消火の方法を研究することが必要である。 もちろん従来でも一部の・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・彼らは三吉らより五つ六つ年輩でもあり、土地の顔役でもあって、普通選挙法実施の見透しがいよいよ明らかになると、露骨に彼ら流儀の「議会主義」へとすすんでいた。「竹びしゃくなんかつくらんでも、わしが工場ではたらくがええ」 高坂がそういって・・・ 徳永直 「白い道」
・・・その形式が未来の実施上参考にならんとは限らんけれども本来から云えばどうしてもこれが原則でなければならない。しかるに今この順序主客を逆まにしてあらかじめ一種の形式を事実より前に備えておいて、その形式から我々の生活を割出そうとするならば、ある場・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・尤も自分で書いて自分で雑誌を出す道楽な文士は多少増かも知れないが、それは実施の上になって見なければ分らない。 余は以上の如く根本において文芸院の設置に反対を唱うるものであるが、もし保護金の使用法について、幸いにも文芸委員がこの公平なる手・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・これを要するに、近年の西洋は、すでに学理研究の時代を経過して、方今は学理実施の時代といいて可ならんか。これを形容していえば、軍人が兵学校を卒業して正に戦場に向いたる者の如し。 これに反して我が日本の学芸は、十数年来大いに進歩したりという・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・世道人心の革命とも見る可きものなるに、其民法の草案は発布前より早く流布して広く世人の目に触れたるにも拘わらず、其規定に対して曾て異論を唱うるものなきのみか、十二議会にはいよ/\之を議決して昨年七月より実施せらるゝことゝは為りぬ。先生は此有様・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ 開国以来、我が日本人は西洋諸国の学を勉め、またこれを聞伝えて、ようやく自主独立の何ものたるを知りたれども、未だこれを実際に施すを得ず、またその実施を目撃したることもなかりしに、十五年前、維新の革命あり。この革命は諸藩士族の手に成りしも・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・ 五ヵ年計画が実施されるにつれソヴェトではだんだん劇場の上演目録も変った。 古典的なオペラ・バレーを演じている国立オペラ舞踊劇場でさえ「蹴球選手」という五ヵ年計画を主題の中へとり入れたバレーを上演した。 カターエフの「前衛」がワ・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
出典:青空文庫