・・・――罷り違ったにした処で、往生寂滅をするばかり。(ぐったりと叩頭して、頭の上へ硝子杯――お旦那、もう一杯、注いで下せえ。万屋 船幽霊が、柄杓を貸せといった手つきだな。――底ぬけと云うは、これからはじまった事かも知れない。……商売だからい・・・ 泉鏡花 「山吹」
・・・ただその時代にはそれがまだ寂滅の思想にしみない積極的な姿で現われている。しかるに万葉から古今を経るに従って、この精神には外来の宗教哲学の消極的保守的な色彩がだんだん濃厚に浸潤して来た。すなわち普通の意味での寂びを帯びて来たのである。この寂滅・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・その為にとうとう八十一歳にしてクシナガラという処に寂滅したのである。仏教徒諸君、釈迦を見ならえ、釈迦の行為を模範とせよ。釈迦の相似形となれ、釈迦の諸徳をみなその二万分一、五万分一、或は二十万分一の縮尺に於てこれを習修せよ。然る後に菜食主義も・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫