・・・そうして付け焼き刃の文明に陶酔した人間はもうすっかり天然の支配に成功したとのみ思い上がって所きらわず薄弱な家を立て連ね、そうして枕を高くしてきたるべき審判の日をうかうかと待っていたのではないかという疑いも起こし得られる。もっともこれは単なる・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・愚弄に報ゆるに愚弄をもってし、当てこすりに答えるに当てこすりをもってする事のできる場合には用はないが、無言な正義が饒舌な機知に富んだ不正に愚弄される場合の審判者としてこの二つの品が必要である。」これには自分はだいぶ異論があったように記憶する・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・それかといって神経衰弱にかかった杞人でない限り、いつ来るかもわからない「審判の日」を気にしてその時の予算までを今日の計画の中に組み込むわけにも行かない。それで政治家、軍人、実業家、ファシスト、マルキシスト、テロリスト、いずれもこんな不定な未・・・ 寺田寅彦 「ロプ・ノールその他」
・・・それに公開の裁判でもすることか、風紀を名として何もかも暗中にやってのけて――諸君、議会における花井弁護士の言を記臆せよ、大逆事件の審判中当路の大臣は一人もただの一度も傍聴に来なかったのである――死の判決で国民を嚇して、十二名の恩赦でちょっと・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・既に文芸委員が政府の威力を背景に置いて、個人的ならざるべからざる文芸上の批判を国家的に膨脹して、自己の勢力を張るの具となすならば、政府はまた文芸委員を文芸に関する最終の審判者の如く見立てて、この機関を通して、尤も不愉快なる方法によって、健全・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・他なし、自己の幸福、社会の安全に関係するところのものなれども、ただ審判の力に乏しくして、あるいは事の成を期すること急に過ぎ、あるいはその事を施行すること劇に過ぎて、心事の本色を現わすこと能わざるのみ。 たとえば少年の勇士が死を決して自か・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・ばかりにして先の方やや太く手にて持つ処一尺四方ばかりの荒布にて坐蒲団のごとく拵えたる基三個本基および投者の位置に置くべき鉄板様の物一個ずつ、攫者の後方に張りて球を遮るべき網(高さ一間半、幅競技者十八人審判者一人、幹事一人等なり。○ベース・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・ 飢餓審判と戦え! 賃金値下げに対してストライキせよ! 少数運動者大会が争闘へ指導する。 新年から我等の日刊新聞を。それを持たないうち我らは共産党じゃない。 先ず犠牲を! ドイツ労働者は『赤旗』のために何をしたか。・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫