・・・そして、働く女性の強大な合唱によって、旧い習俗の壁を崩さなければなるまいと思う。〔一九四一年二月〕 宮本百合子 「働く婦人の歌声」
・・・然し、現代の高度な資本主義の社会観の発展と地球六分の一をしめる社会主義体制との摩擦は、自ら異った容貌で、新興勢力の裡にふくまれている強大な可能性を歪曲しつつあるのであるまいか。 エンゲルスがマーガレット・ハークネスに送った手紙に「作・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・その証拠には、こんど第二次大戦に勝った強大国が、負けた諸国と無関係に自分の国の内だけの繁栄をたのしんでいられない有様を見てもわかる。 第一次大戦のとき、連合国の一つとして最も少い損害をうけたのはアメリカであった。第二次大戦で、最も僅かの・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・ けれども、人類の認識の範囲が拡大し、個人の意識が人生に向ってより多様複雑な綜合的人格として働きかけるようになって来ると、一方に於て社会性が強大になるに伴って人間の個性が顕著になって来る。 一個の社会を形ち造る以上、個々人は決して連・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・どんなに立派なことをいっても金を儲けることが目的で、婦人作家を強大にするにしろ自分の利益と見合せてのことです。一番ひどい場合は、今から七、八年前になりますか、女の作家が非常にたくさんいろいろの仕事をした時代がありますが、ちょうど太平洋戦争の・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・規律正しい練習、健康法、その他の勉強をしてゆくに強大な忍耐と意志と聰明さがいる。そして、そういう音楽勉強の許される経済事情が必要であるのは明らかだ。それにしても、文学的創作をやってゆく場合より、女性としての自然の生理的条件が、遙かにひろい基・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・何ぜなら、コルシカの平民ナポレオンが、オーストリアの皇女ハプスブルグのかくも若く美しき娘を持ち得たことは、彼がヨーロッパ三百万の兵士を殺して贏ち得た彼の版図の強大な力であったから。彼はルイザを見たと同時に、油を注がれた火のようにいよいよロシ・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
・・・すなわち享楽人はその享楽において広汎かつ強大な能力を持たなくてはならぬ。 享楽の対象は自然と人生の一切である。従って享楽はどの隅にもあり得る。しかし我々は金をためること、肉欲にふけることを無上の悦楽とする「高利貸的人間」が、広汎な享楽の・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・それは人の心を甚深なる実在の奥秘に引き寄せながら、しかも恐怖を追い払う強大な力を印象する。そこには線の太い力の執拗な格闘がある。しかしすべての争闘は結局雄大な調和の内に融け込んでいる。それは相戦う力が完全な権衡に達した時の崇高な静寂である。・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・人間は自然力の上に未曾有の強大な支配者となった。しかしそれで人間はどれほどよくなったか。お互いに殺人器をますます精鋭にし、殺人法をますます残酷にしたというほかに、どれほど人間を進歩させたか。――我々は現戦争のあらゆる著しい特質を見まわしたあ・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫