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・・・ にわかのあたたかさ、夢から現にかえったように、今更事々しく人の口葉にのぼる花見の宴をはる東の御館と云うのは、この里の東の方を一帯にのこって居るみどりの築土あるのがそれ、東の御館と呼んでも、この人とぼしい山里に対して呼ぶべき西の館もなく・・・
宮本百合子
「錦木」
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・・・神の御社を下に見ながら大きな御館の上を越して飛んでまいるうちに天気が急にかわっていかい大風になって参ったので小鳥はそのかくれ家を求めて居るとすぐそばに己れの飛んで居るより高い所にその梢のある大木が見つかったのでそこの葉かげに美くしい身をかく・・・
宮本百合子
「胚胎(二幕四場)」