・・・入院の手続は連の人が既にしてくれたので直に二階のある一室へ這入った。二等室というので余り広くはないが白壁は奇麗で天井は二間ほどの高さもある。三尺ばかりの高さほかない船室に寐て居た身はここへ来て非常の愉快を感じた。殊に既往一ヶ月余り、地べたの・・・ 正岡子規 「病」
・・・「いや、何か重役の人が醸造の方へかかろうとして手続を欠いて責任を負ったとか云っていたが。」「どうしてどうして。酒をつくることなんかみんな大将の考えなんですよ。」「だって試験的にわずかつくっただけだそうじゃないですか。」「あな・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
新聞に、ぽつぽつと婦人代議士として立候補を予測される人々の写真などがのりはじめた。自分ではっきり立候補の計画をもっている婦人たちは、ふさわしいと判断した政党に入党手続をしたと報道されているし、立候補を予測されている人の中で・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・読んでしまって返す本はそちらで郵送宅下げの手続きをして下さると、一等便利でしょうと思います。これは三日に云うのを忘れました。 この手紙はいつ頃あなたのお手許に届くでしょうね。そして、あなたのお手紙はいつ頃私のところへ来るのでしょう。私は・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・失われた時計については光井叔父上がたのんだ人からいろいろ手続中の模様ですが、役所ではその品物について一々詳細のことを私に訊くよう申すらしいのですが、どうして知って居りましょう まして、帽子などまで! ねえ。困ったことです。この次こまかいこと・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・読んでしまって返す本はそちらで郵送宅下げの手続きをして下さると、一等便利でしょうと思います。これは三日に云うのを忘れました。 この手紙はいつ頃あなたのお手許に届くでしょうね。そして、あなたのお手紙はいつ頃私のところへ来るのでしょう。私は・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 将軍家がこういう手続きをする前に、熊本花畑の館では忠利の病が革かになって、とうとう三月十七日申の刻に五十六歳で亡くなった。奥方は小笠原兵部大輔秀政の娘を将軍が養女にして妻せた人で、今年四十五歳になっている。名をお千の方という。嫡子六丸・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・それであるから、桂屋太郎兵衛の公事について、前役の申し継ぎを受けてから、それを重要事件として気にかけていて、ようよう処刑の手続きが済んだのを重荷をおろしたように思っていた。 そこへけさになって、宿直の与力が出て、命乞いの願いに出たものが・・・ 森鴎外 「最後の一句」
・・・ 翁はこう思い定めたが、さてこの話を持ち込む手続きに窮した。いつも翁に何か言われると、謹んで承るという風になっている少女らに、直接に言うことはもちろん出来ない。外舅外姑が亡くなってからは、川添の家には卑属しかいないから、翁がうかと言い出・・・ 森鴎外 「安井夫人」
・・・それには、正規の手続きを経て、軍人、巡査、警手などになればよい。しかし父はもう老年でこの内のどれにもなれない。しからばあとに残されたのは、皇居離宮などのまわりをうろつくか、または行幸啓のときに路傍に立つことのみである。それは平時二重橋前に集・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫