・・・「だけれども、何も、悪い自分のものまでを、放縦に現わす必要はないではありませんか」 母は次第に亢奮を押え切れなくなった。「先達って、百合子が来た時にも、随分熱心に話したのだけれども、どうしても合わない、間違った処がある。自分の心・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・封建的な恋愛、結婚、家庭生活の重みに反撥することから、進歩的見解をもつ若い人々が我知らず機械的唯物論に陥ったり、アナーキスティックな放縦へ墜落したりすることの多い現代の分解的・醗酵的雰囲気の中では、このことは特に大切であると思われる。 ・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
・・・ ある時は空想がいよいよ放縦になって、戦争なんぞの夢も見る。喇叭は進撃の譜を奏する。高くげた旗を望んで駈歩をするのは、さぞ爽快だろうと思って見る。木村は病気というものをしたことがないが、小男で痩せているので、徴兵に取られなかった。それで・・・ 森鴎外 「あそび」
出典:青空文庫