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・・・されば意の未だ唱歌に見われぬ前には宇宙間の森羅万象の中にあるには相違なけれど、或は偶然の形に妨げられ或は他の意と混淆しありて容易には解るものにあらず。斯程解らぬ無形の意を只一の感動に由って感得し、之に唱歌といえる形を付して尋常の人にも容易に・・・
二葉亭四迷
「小説総論」
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・・・その度に、斯程の誤解と、混乱があるのでは、どうしたらいいのか。又、彼女の威脅や涙に、創作を掣肘されては堪えられない。今まで、自分は充分、それを受けて来た。やっと、人間として生活し始め、独特な作品も出ようと云う時、又、再び、貧しき人々の群を書・・・
宮本百合子
「二つの家を繋ぐ回想」