・・・国家が社会施設として育児院、産院、託児所を設けなければならないということは、寿産院の事実ではっきり示されています。〔一九四八年一月〕 宮本百合子 「“生れた権利”をうばうな」
・・・大河内氏もいわれたとおりいろいろの社会的施設の不備について改善を要求する発言をしていろいろの行動をしているのです。デモとかストライキをする。しかし権力はそういうことを禁じる。そういう要求によって、いろいろな行動をしたり発言したりする人を引張・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・マリアはフランスの衛生施設の組織を調べて、一つの致命的と思われる欠陥を見出した。それは後方の病院にも戦線の病院にもX光線の設備をほとんど持っていないという事である。あわれに打ちくだかれた骨の正しい手当、また傷の中の小銃弾や大砲の弾丸の破片を・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・海女として少女から相当の年までの女が働いているところでそういう施設をつくることは、形の上では比較的たやすいだろう。しかし、そういう地方の婦人は、働きの中心に自分たちがいて来ているのだから、ただ漁夫の娘とし、妻とし、母として、朝と夕べに舟を送・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・ きょうの若い女性たちが、明日は立派な乳房とつよい腕と年毎に智慧の深まるしっかり優しいまなざしを持つ母たちであろうとするならば、それらの女性が自分たちとその子のために、社会に必要なあらゆる施設を、それが住宅と産院であるにしろ、托児所や子・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
十篇の応募作品をよんだ。出来・不出来はあるにしろ、そのどれもを貫いて流れているのは、日本の結核療養に必要な社会施設のとぼしさと、そこからおこる闘病の苦しく複雑な現実の思いである。ベティー・マクドナルドというアメリカの婦人作・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・その沈潜するこころもちをまぎらすように、わやわやとした声でかつて軍部に扈従して政治や文学を語った作家が、こんどは、軍事基地施設を拒むことは出来ないという吉田首相をとりまいて文学・政治を談じている。 これらの現実にかかわらず、地球は、今日・・・ 宮本百合子 「五月のことば」
・・・ 今から十七年前、帝政ロシアの資本家・地主と僧侶の支配下のロシアで、勤労大衆のために中等教育施設がどんなものだったかは次の表を見ても明かだ。一九一四年度ロシアの中学校、実務学校、予備学校における学生の出身階級の分布 世襲貴族・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ しかも、日本の軍事的権力によって特別な保護をうけていた企業家たちは、生産の大半を婦人の労力によって行いながら、勤労婦人の福祉施設、母性保護設備、災害予防施設は行わずにきたのです。 今日、日本の組織労働者は四百万人あります。その半数・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・民法が改正され、結婚の自由、離婚の自由が認められようとしていますが、現実の社会に、母と子の生存を守るしっかりした施設が一つもなければ、真面目な意味での結婚にも、さけがたい理由をもった正当な離婚にも、自由ということはなりたちません。子供の生活・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
出典:青空文庫