・・・話の筋は、氏の得意とされる馴れの行動による知識人夫妻の悲劇的殺傷問題である。良人が兇器をもって不自然に死んだ妻の傍に立っていた。だから良人が手を下したのではないかという疑いは一応誰しも持つであろう。実際は誤った自殺であった。五十一頁に亙る探・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・シロウトの強盗は昔からこわいといわれてきたのは、ただでさえおびえて人の家へ忍びこんだ者が相手に眼をさまされて、こわさで夢中になって相手を殺傷するからであった。 ところが、この頃の強盗殺人は、いつもかならず人を殺さなければならないほどの動・・・ 宮本百合子 「戦争でこわされた人間性」
・・・て経営される思想犯保護施設である希望館の内部生活の描写とその屈辱と汚穢に堪えきれなかった仙三という主人公が、大阪太陽新聞主催の見世物めいた座談会の席上で、希望館同宿人の中で最も卑屈狡猾な江沼という男を殺傷する場面で終っている。 この作者・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・むしろ、偶然に社会の耳目をひいた恋愛事件、恋愛による殺傷事件などの刺戟が、昨年から今年にかけてこの恋愛論を生んでいるのではないだろうか。 そして、現在私たちの周囲にある恋愛論の多くは恋愛論の論というとおかしいが、そういう恋愛論は正しいと・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫