・・・ そこへ行くと、無産政党の演説会は、たいていどの演説会でも、既成政党を攻撃はするが、その外、自分の党は何をするか、を必ず説く。そこは、徹頭徹尾、攻撃に終始する既成政党の演説会に比して、よほど整い、つじつまが会っている。 しかし、演説・・・ 黒島伝治 「選挙漫談」
・・・殊に、現在の、深刻な農業恐慌の下で、負担のやり場を両肩におッかぶせられて餓死しないのがむしろ不思議な農民の生活、合法無産政党を以て労農提携の問題をごま化し去ろうとする社会民主主義者共の偽まんを突破して真に階級性を持った提携に向って進んでいる・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・その物の考え方は、もうプロレタリアートのそれではない。無産階級運動の妨げにこそなれ、役には立たないのである。そういう奴等は、一とたび帝国主義××が起れば、反対するどころか、あわてはためいて、愛国主義に走ってしまうのだ。 三・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・周の頃の大古物、妲己の金盥に狐の毛が三本着いているのだの、伊尹の使った料理鍋、禹の穿いたカナカンジキだのというようなものを素敵に高く買わすべきで、これはこれ有無相通、世間の不公平を除き、社会主義者だの無産者だのというむずかしい神の神慮をすず・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・君はいったい、無産階級の解放を望んでいるのか。無産階級の大勝利を信じているのか。程度の差はあるけれども、僕たちはブルジョアジイに寄生している。それは確かだ。だがそれはブルジョアジイを支持しているのとはぜんぜん意味が違うのだ。一のプロレタリア・・・ 太宰治 「葉」
・・・ゆえに経済書を学ばざるものは、巨万の富豪も無産の貧漢に異ならず。第九、法律書 人の生命・家産を重んじ、正をすすめ邪をとどむるの法を論じたるものなり。法律に暗き人は、知らずして罪を犯し、知らずして法にしたがうことあり。あたかも・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
「伸子」は一九二四年から一九二六年の間に書かれた。そのころの日本にはもう初期の無産階級運動がおこっていたし、無産階級文学の運動もおこっていた。けれども作者は直接そういう波にふれる機会のない生活環境にあった。「伸子」には、日本・・・ 宮本百合子 「あとがき(『伸子』)」
・・・日本の文学には無産派文学運動が擡頭していて、アナーキズムとボルシェビズムの対立のはっきりしはじめた時代であった。蔵原惟人・青野季吉その他の人々によって、芸術の階級性ということが主張され、文学の社会性の課題がとりあげられていた。文学様式として・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・ 一九二三年と云えば日本では、無産階級解放運動の初期で、アナーキズムとボルシェビズムとの対立の時代であった。年鑑の頁をくってみれば、この年五月にはソヴェトからヨッフェが来ている。普選で成功するために総同盟が右翼化することを決定した年でも・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ 当時日本にはもう初期の無産階級運動が盛であったし、無産階級の芸術運動もおこっていた。解放運動の全線にわたって、アナーキズムとコンムニズムとの区別が明確にされていない時代であった。プロレタリアートが、歴史の推進力となる階級であることは主・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
出典:青空文庫