・・・(興奮しつつ、びりびりと傘を破く。ために、疵つき、指さき腕など血汐浸――畜生――畜生――畜生――畜生――人形使 ううむ、(幽に呻ううむ、そうだ、そこだ。ちっと、へい、応えるぞ。ううむ、そうだ。まだだまだだ。夫人 これでもかい。これで・・・ 泉鏡花 「山吹」
・・・ それにねえ、若し自分より前の人が自分より達者に同じ物を描いたのでも見るときっと破くか見えない所にしまうかしなければ安心が出来ない様な事が起こって来るもの。「だって私にはそう都合よく行かないんだもの。「仕て出来ない事ってありゃし・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・ 又見とうなくば破く事も焼きすてる事も出来るものじゃ。 人間の怒った顔と申すものは世の中の一番文字の下手がかいたものより尚見にくうて、 そうたやすくは、やきすてる事も出来んものでの。 いっち人こまらせものじゃ。法 鏡の・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
出典:青空文庫