・・・今日作品を書いている佐多稲子、平林たい子、松田解子、壺井栄など。これらの婦人作家は、それまでの婦人作家とちがって、貧困も、勤労の味も、女としての波瀾も経験した人々であった。そういう人達によって、本当に社会矛盾を認識し、人間として伸びようとす・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ いつぞや窪川稲子が『婦人文芸』に現代の婦人作家が社会生活の点から負うている重荷のことについて書いていたことがありますが、実際、今日の社会で女としての生活、婦人作家としての生活をふたつながら立派に打ちたててゆくということは非常な努力のい・・・ 宮本百合子 「女流作家多難」
アグネス・スメドレーの「女一人大地を行く」という自伝的な小説は一九二九年アメリカで出版されて以来、殆ど世界各国語に訳され、日本でも少なからず読まれた。 この間、窪川稲子さんに会ったら、或る若い勤労婦人のひとで、この小説・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・ 窪川稲子さん、壺井栄さんなどとの互の心持の関係は、友情もひととおりのものでなく、そういうところまで行っているのだと思う。そして、めいめいの良人に対する友情も、謂わば互の心にある妻としての情愛を互に理解した上でのようなところがあって・・・ 宮本百合子 「なつかしい仲間」
・・・それ以後は佐多稲子が責任者となった。即ち四月に私が検挙されたことが責任者の交替をもたらしたのであった。この年は非常に多くの紹介・啓蒙の文筆活動を行った。旅行記『新しきシベリアを横切る』内外社。一九三二年二月。宮本顕治と結・・・ 宮本百合子 「年譜」
今わたしの机の上に二冊の本が置かれている。一冊は最近中央公論社から出版された窪川稲子の初めての長篇小説と云うべき「くれない」である。もう一冊は、これもごく近く白水社から出た「キュリー夫人伝」である。この二冊の本は、それぞれ・・・ 宮本百合子 「はるかな道」
・・・ 風邪をひいて臥ていた稲子さんのわきに坐って、私が一生懸命その心持を話したら、稲子さんは、ふっと笑った顔になって、もし男のカッスルが生きのこる方だったら踊ったかもしれない、と云った。私たちは女の作家なのだから、そういうことも決してその時・・・ 宮本百合子 「表現」
・・・ 佐多稲子は「私の東京地図」をもって新しい出発に踏みだした。この連作で作者は戦災によってすっかり面がわりした東京の下街のあすこここを回想的に描き出しながら、そこを背景として、一人の勤労する少女が働く若い女となり、やがて妻、母として階級に・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・そういうことに対して女の人の十分な声、十分な立場、女が幸福であれば男も幸福であるというそういうことを主張していた佐多稲子さん、平林たい子さんのような人達、このような人達は女というものは男よりも決して劣ったものでなく、劣っているとすれば、今ま・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・数百千の男女はエジプトの野を覆うという蝗の群れのように動いている。貴公は何ゆえに歩いてるかと問うと用事があるからだと言う、何ゆえに用事があるかと問うと、おれは商売をしている、遊んでるのじゃないと答える。商売は金のためで金は欲のためである。生・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫