・・・自分を突破して客観的真実に迫ってゆく歓喜が余り深くこまやかであるから芸術の制作に対する熱情と献身とは、人間の世界で愛の範疇にいれて語られるのだろうと思う。〔一九四七年七月〕 宮本百合子 「作品と生活のこと」
・・・自分で自分の手にあまる廻りからは、どんどん新たな、決して、私の有るべきという範疇では認めていなかった関係的いきさつが不快に、或る時には明かに不正に襲って来る。 単純であった為、整然としていた自己というものは、極度に分裂してしまいました。・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・先ず少くとも一応は客観的形式なるものの範疇を分析し、主観的形式の範疇分析をした結果の二形式の内容の交渉作用まで論究して行かねばならなくなる。ただそれのみの完成にても芸術上に於ける一大基礎概念の整頓であり、芸術上に於ける根本的革命の誕生報告と・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫