最近豪華版とか、限定版とか称する書籍を見る。少い部数で、一々本の番号を付し、非常に立派な装幀で、一見洵に豪華なものである。限られた少数の富裕な見手を目当てにしたものだろう。私達から見れば此上なく意味のないもので、読んで見て・・・ 宮本百合子 「業者と美術家の覚醒を促す」
・・・「さすがに装幀もようござんすね」そう云ったきり一冊しか出さないのである。 純綿ものでも出されたような工合で、その一冊を買った。 日本画家の芸術家としての内部生活の限界とでもいうようなものにふれて、様々の読後感に打たれた。・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・ 同伴者の作家は、彼らのしゃれた装釘の本で何を書いているか? 構成派の作家たちは、ハイカラで気取った文章で、何をいおうとしているか。そして、それは、社会主義社会への達成に、汗と血を惜しまぬソヴェト・プロレタリアートのためにどんな価値・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・何故なら私の記憶の前には、中川一政氏によって装幀された厚い一冊の本と、ゴーリキイの如何にも彼らしい「なに、結構読める」と云った声とがまざまざと結びついて生きていて、その思い出はゴーリキイという一人の大きい作家の生涯の過程を私に会得させるため・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・何故なら私の記憶の前には、中川一政氏によって装幀された厚い一冊の本と、ゴーリキイの如何にも彼らしい「なに、結構読める」と云った声とがまざまざと結びついて生きていて、その思い出はゴーリキイという一人の大きい作家の生涯の過程を私に会得させるため・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ 私は賢しこい読者に多くを云わず、或る方々は全集の装幀が華やかだから購読なさるであろうバルザックの作品の中から、一つの文句をとり出そうと思います。バルザックはこういう意味を結論した。「民衆と女とは、吾々の平和のために圧えておかなければな・・・ 宮本百合子 「私も一人の女として」
・・・その裏に太田正雄さん、文壇での通名木下杢太郎さんがこの本の装釘をして下すったと云うことわりがきがドイツ文で書き入れてあるが、あれも文芸委員会の文句を入れるに極まってから、その紙の裏が白くなるので、それを避けるために、思い立って入れた。それは・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫