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・・・ 四 喬は丸太町の橋の袂から加茂磧へ下りて行った。磧に面した家々が、そこに午後の日蔭を作っていた。 護岸工事に使う小石が積んであった。それは秋日の下で一種の強い匂いをたてていた。荒神橋の方に遠心乾燥器が草原に転ってい・・・
梶井基次郎
「ある心の風景」
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・・・ドック近くの裏町の門々にたたずむ無気味な浮浪人らの前をいばって通り抜けて川岸へくると護岸に突っ立ったシルクハットのだぶだぶルンペンが下手な掛け図を棒でたたきながら Die Moriat von Mackie Messer を歌っている。伴奏・・・
寺田寅彦
「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」