・・・相撲と碁将棋とは、その事柄において、これを政事に比して軽重の別あるがゆえに、その軽重の差にしたがいて、双方の長と長と比肩するを得ざるものなりといえども、今一国文明の進歩を目的に定めて、政事と学事と相互に比較したらば、いずれを重しとし、いずれ・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・ そもそも文学と政治と、その世に功徳をなすの大小いかんを論ずるときは、此彼、毫も軽重の別なし。天下一日も政治なかるべからず、人間一日も文学なかるべからず、これは彼を助け、彼はこれを助け、両様並び行われて相戻らず、たがいに依頼して事をなす・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・つまる処、子供とて何時までも子供にあらず、直に一人前の男女となり、世の中の一部分を働くべき人間となるべきものなれば、事の大小軽重を問わず、人間必要の習慣を成すに益あるか妨げあるかを考え合わせて、然る後に手を下すべきのみ。然らずんば、人間の腹・・・ 福沢諭吉 「家庭習慣の教えを論ず」
・・・近来は市校の他に学校も多ければ、子弟のために適当の場所を選ぶは全く父母の心に存することにして、これがため、敢てその人物を軽重下等士族の輩が上士に対して不平を抱く由縁は、専ら門閥虚威の一事に在て、然もその門閥家の内にて有力者と称する人物に向て・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・その用の価は子を養教するの用に比較して綿密に軽重を量りたるか。甚だ疑うべし。 また口実に云く、戸外の用も内実は好む所にあらざれども、この用に従事せざれば銭を得ず、銭なければ家を支うるを得ず、子供を棄てて学校に入れたるは止むを得ざるの事情・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・仮令い博識の大学者たらざるも、人事の大概に通達して先ず自身の何者たるを知り、其男子に対するの軽重を測り、男女平等不軽不重の原則を明にし、内に深く身権を持張して自尊自重敢て動揺せざるまでの見識を得せしむるは、子を愛する父母の義務なる可し。又旧・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・けだし農なり商なり、また航海なり、人生の肉体に属することにして近く実利に接するものなれば、政府はその実際の利害につき、あるいは課税を軽重し保護を左右する等の術を施して、たちまちこれを盛ならしめ、またたちまちこれを衰えしむること、はなはだやす・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・また男といい女といい、ひとしく天地間の一人にて軽重の別あるべき理なし。 古今、支那・日本の風俗を見るに、一男子にて数多の婦人を妻妾にし、婦人を取扱うこと下婢の如く、また罪人の如くして、かつてこれを恥ずる色なし。浅ましきことならずや。一家・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・いやしくも我が一身の内に美ならんか、身外満目の醜美は以て我が美を軽重するに足らず。あるいはこれに反して我が身に一点の醜を包蔵せんか、満天下に無限の醜を放つものあるも、その醜は以て我が醜を浄むるに足らず、また恕するに足らず。されば文明なる西洋・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・うまれた甲斐には、ねらうべき点を、間ちがえず見つめ、生活内部の軽重ということを、はっきり知っていた。彼れ等の一人も、ため込む為に、金がほしいとは思わなかったでしょう。あの女を俺のものにするには、金がいる、とも考えはしなかったでしょう。或る程・・・ 宮本百合子 「男…は疲れている」
出典:青空文庫