第一巻 ことしの夏、私はすこしからだ具合いを悪くして寝たり起きたり、そのあいだ私の読書は、ほとんど井伏さんの著書に限られていた。筑摩書房の古田氏から、井伏さんの選集を編むことを頼まれていたからでもあったのだ・・・ 太宰治 「『井伏鱒二選集』後記」
・・・は、たいへん男振りが自慢らしく、いつかその人の選集を開いてみたら、ものの見事に横顔のお写真、しかもいささかも照れていない。まるで無神経な人だと思った。 あの人にとぼけるという印象をあたえたのは、それは、私のアンニュイかも知れないが、しか・・・ 太宰治 「如是我聞」
選集第八巻、第九巻に、ソヴェト見学時代のいろいろな報告をあつめることができたのは、思いもかけなかったよろこびである。 一九二七年の冬から一九三〇年の十一月まで、まる二年七ヵ月ほど作者は主としてモスクワに生活した。一九二・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・ 一九三一年、一月号の『ナップ』に「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」をかきはじめてから、わたしの評論的活動がはじまった。 選集第十巻に収められている文学評論は、一九三一年から三六年ごろまでの間にかかれたものである。その一つ一つを、こんに・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ この選集第十一巻には、四十二篇の文芸評論があつめられているが、特徴とするところは、これらの四十二篇のうち、二十七篇が、はじめてここに単行本としてまとめられたということである。久しい間、新聞や雑誌からの切りぬきのまま紙ばさみの間に保存さ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・この集にはほかに「氷蔵の二階」、「部屋」が収められている。これらの作品は一九二七年の暮れ近くまでの間にかかれたものである。この選集第二巻は、秋の山歩きから帰って来たときの龍のようでもある。思いがけない歳月の落葉の下から拾われた栗のような「古・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ 選集へどんな作品をのせるかという話が出たとき、わたしは絶えて久しいこの「古き小画」のことを思い出した。こんな風に古い物語を書いたりしたたった一つの作品であるし、今は忘れてしまっているその作品が、当時の自分によってどんなに扱われていたろ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・現代の読者にとってそれは不必要な重荷であるから、この選集に収録するにあたって、漢字をだいぶ仮名になおした。文章そのものはもとのままである。 一九四八年九月〔一九四八年十二月〕・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・ こんど新しくマルクス=レーニン主義研究所からもっとも信頼できる人々の手でマルクス=エンゲルス選集が出版されることを私はひじょうにたのしみに思い、よろこばしく思う。こういう本は、学問上の一定のむずかしさはさけがたいにしろ、こんなに急速に・・・ 宮本百合子 「生きている古典」
岩波文庫『魯迅選集』とパアル・バックの『分裂せる家』魯迅という作家が支那の一九二四・五年からの八九年間に亙る急激な社会的推移の間で、この作家の偉大な特質である人間的正義感と民族解放の慾求とをどう成長させたかと云う点で、こ・・・ 宮本百合子 「カレント・ブックス」
出典:青空文庫