・・・脚本と批評はこれに次ぐべき重要の因数に相違ないが、分量からいっても、一般の注意を惹く点からいっても、遂に小説には及ばない。その小説について、斯道に関係ある我々の見逃し能わざる特殊の現象が毎月刊行の雑誌の上に著るしく現れて来た。それは全体の小・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・この四つのうちに、重要の度からして差等の点数をつけて見ろと云われた時に、何人もこれをあえてする事はできないはずと思います。もしあるとすれば答案を調べずに点数をつける乱暴な教員と同じもので、言語道断の不心得であります。ただ吾は時勢の影響を受け・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・習慣という如きことは、普通は、哲学的に重要な役目を有つとは考えられないのであるが、ラヴェッソンなどの哲学においては、習慣というものが世界観の根本的な役目をしている。ラヴェッソンはシェリングの影響を受けたというが、シェリングの同一が、メーン・・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・単に建物ばかりでなく、町の気分を構成するところの全神経が、或る重要な美学的意匠にのみ集中されていた。空気のいささかな動揺にも、対比、均斉、調和、平衡等の美的法則を破らないよう、注意が隅々まで行き渡っていた。しかもその美的法則の構成には、非常・・・ 萩原朔太郎 「猫町」
・・・ だが、未だ重要なることはなかったか? それは、飲料水タンクを修理することだ。 若し、彼女が、長い航海をしようとでも考えるなら、終いには、船員たちは塩水を飲まなければならない。 何故かって、タンクと海水との間の、彼女のボット・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・成分は蛋白質が二二パアセント、脂肪が十八ポイント七パアセント、含水炭素が零ポイント九パアセントですが、これは只今ではあんまり重要じゃありません。油揚の代りに近頃盛んになったのは玉蜀黍です。これはけれども消化はあんまりよくありません。」「・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・政府は重要産業の補償をうち切って、百万人の失業者を出すそうだが、その百万人の人々とその家族、その主婦たちにとって、この威風にみちた秋田の稲田のことしのみのりは、どういうものになって現れるのだろう。 政府がきめる土地調整法案で地主は必ずし・・・ 宮本百合子 「青田は果なし」
・・・それを言明しても、果物が堅実な核を蔵しているように、神話の包んでいる人生の重要な物は、保護して行かれると思っている。彼を承認して置いて、此を維持して行くのが、学者の務だと云うばかりではなく、人間の務だと思っている。 そこで秀麿は父と自分・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・何故なら、文学などと云うものは、コンミニストにとっては、左様に深き認識者の重要物ではないからだ。 もし、彼らにして文学を認めるとすれば、文学に対して最も深き認識者は、コンミニストたらざるを得なくなると云う認識も否定すべきであろう。・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
・・・そうしてみると、これらの三つの点だけでも、応永時代は延喜時代よりも重要だと言わなくてはなるまい。 もっとも、この三つの点以外であげられている名人は、我々にはちょっと歯の立たない連中である。詩人では南禅寺の惟肖和尚が、二、三百年このかた、・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫