・・・の文化国日本にどうしてそれと同じような科学が同じ歩調で進歩しなかったかという問題はなかなか複雑な問題であるが、その差別の原因をなす多様な因子の中の少なくも一つとしては、上記のごとき日本の自然の特異性が関与しているのではないかと想像される。す・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・自分は芭蕉時代の連句がいかなる統率法によって行なわれたかという事についてなんらの正確な知識をもたないのであるが、少なくも芭蕉の関与したものである限り、いずれも芭蕉自身がなんらかの意味において指揮棒をふるうてできたものと仮定してもおそらくはな・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ わたくしの知っていた人たちの中で兵火のために命を失ったものは大抵浅草の町中に住み公園の興行ものに関与っていた人ばかりである。 大正十二年の震災にも焼けなかった観世音の御堂さえこの度はわけもなく灰になってしまったほどであるから、火勢・・・ 永井荷風 「草紅葉」
・・・ 時間がなくていろいろなお話ができないのですけれども、民主的なものの一番根本は人間の生きている権利、そしてそれは私共は社会の生産に関与して生きているというその権利が主体なのです。そのほかわれわれが考えなければならないことは、今の憲法草案・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・社会的生産に関与する社会労働が基礎になっているから、小学校にしろ、ただ小学校とは云わず単一勤労学校と云う名称だ。 子供は小さいときから社会的勤労・生産・社会主義の建設とはっきり結びついた教育法にのっとって育てられて行く。例えば第一学期は・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・逆にどんな澎湃たる歴史の物語もそこに関与したそれぞれの社会の階層に属す人間の名をぬいて在ることは出来ないという事実の機微からみれば、たとい草莽の一民の生涯からも、案外の歴史の物語が語られ得る筈である。 このことは明瞭に大正初期に見られた・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ ある種の文学者たち自身が営利的ジャーナリズムに関与しはじめたということのほか、今日どういうやりくりをしてか三百余種の文芸雑誌があるということを思えば『新日本文学』が紙のないためにあんな薄っぺらなものを間遠にしか出しえない事実は、私ども・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・日本では、婦人が地方自治体の政治に干与するための公民権さえも持たなかった。つい先頃一九三〇年全国町村長会議は、婦人の公民権案に反対を表明している。翌一九三一年満州に対する日本の侵略戦争が始まった。それからというものは、誰も知る通り、日本にお・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫