・・・木の葉をつたい歩く蟻にとりては一粒一粒の雨滴の落つる範囲を方数ミリメートルの内に指定する事が必要なれども、吾人人間には多くの場合にただ雨量と称する統計的の数量が知らるれば十分なり。 六 以上述べたる所に基づき・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・一年三百六十五日間における日々の甲某百貨店の第X売り場における売り上げ高と日々の雨量との関係いかんということが問題になったとする。これはともかくも応用気象学上の一つの問題となりうるであろう。雨は市民の外出に若干の影響を及ぼしうると考えられる・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
・・・ 葡萄棚の下に拵えた私共の涼台に、すぐ薄縁の敷るほどの雨量しかなかった。其れにしても、久しぶりで雨あがりの爽やかさに触れたので、皆な活々とした。そして、涼台に集って雑談に耽っていると八時頃、所用で福井市に出かけていた家兄が、遽しい様子で・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫