・・・岡村君、時代におくれるとか先んずるとか云って騒いでるのは、自覚も定見もない青臭い手合の云うことだよ」「青臭いか知らんが、新しい本少しなり読んでると、粽の趣味なんか解らないぜ」「そうだ、智識じゃ趣味は解らんのだから、新しい本を読んだと・・・ 伊藤左千夫 「浜菊」
・・・なまで噛むと特徴ある青臭い香がする。 年取った祖母と幼い自分とで宅の垣根をせせり歩いてそうけ(笊に一杯の寒竹を採るのは容易であった。そうして黒光りのする台所の板間で、薄暗い石油ランプの燈下で一つ一つ皮を剥いでいる。そういう光景が一つの古・・・ 寺田寅彦 「郷土的味覚」
・・・ 甘蔗のひと節を短刀のごとく握り持ってその切っ先からかじりついてかみしめると少し青臭い甘い汁が舌にあふれた。竹羊羹というのは青竹のひと節に黒砂糖入り水羊羹をつめて凝固させたものである。底に当たる節の隔壁に錐で小さな穴を明けておいて開いた・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
出典:青空文庫