・・・大学にいる間、秀麿はこの期にはこれこれの講義を聴くと云うことを、精しく子爵の所へ知らせてよこしたが、その中にはイタリア復興時代だとか、宗教革新の起原だとか云うような、歴史その物の講義と、史的研究の原理と云うような、抽象的な史学の講義とがある・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・第三に、日本画で現代の浴室を、しかも全裸の女を描き得たということは、一種の革新である。現代に題材を取っても、できるだけ詩的な、現代離れのしたものを選みたがる日本画家の中にあっては、確かに注目に価することに相違ない。第四に構図と色彩とが成功で・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
歌舞伎芝居や日本音曲は、徳川時代に完成せられたものからほとんど一歩も出られない。もし現在の日本に劇や音楽の革新運動があるとすれば、それは西欧の伝統の輸入であって、在来の日本が生み出したものの革新ではない。それに比べると日本画には内から・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫