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・・・ 清水につくと、魑魅が枝を下り、茂りの中から顕われたように見えたが、早く尾根づたいして、八十路に近い、脊の低い柔和なお媼さんが、片手に幣結える榊を持ち、杖はついたが、健に来合わせて、「苦労さしゃったの。もうよし、よし。」 と、お・・・
泉鏡花
「神鷺之巻」
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・・・幼年時代はすべての世界が恐ろしく、魑魅妖怪に満たされて居た。 青年時代になってからも、色々恐ろしい幻覚に悩まされた。特に強迫観念が烈しかった。門を出る時、いつも左の足からでないと踏み出さなかった。四ツ角を曲る時は、いつも三遍宛ぐるぐる回・・・
萩原朔太郎
「僕の孤独癖について」