・・・シェクスピアは、森のいたずらなこだまパックを登場させた。パックが二人のアテナ人の瞼にしぼりかけた魔法の草汁のききめは、二人の男たちの分別や嗜好さえも狂わせて、哀れなハーミヤとヘレナとは、そのためどんなに愚弄され、苦しみ、泣き、罵らなければな・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・漁師のパック、詩人トック、音楽家クラバックなどの活躍する芥川の河童の国には、生活と判断とが溌溂と盛られていて、作者の社会批評と人生と芸術への気持が、積極な熱をもって流れている。 それにもかかわらず、河童の国へ墜ちなければ、クラバックの直・・・ 宮本百合子 「日本の河童」
・・・舞台では、アテナの二組の恋人たちが、パックのおとす一滴の草汁のために、対手をとりちがえ、愛そのものをとりちがえて、泣きつ叫びつ混乱する。それを、ゲラゲラ笑って見ているほど、それほど愚弄されることについて日本民衆の感覚はマヒさせられている。軍・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
出典:青空文庫