出典:青空文庫
・・・「いつか阿部定も書きたいとおっしゃったでしょう。グロチックね」 私の小説はグロテスクでエロチックだから、合わせてグロチックだと、家人は不潔がっていた。「ああ、今も書きたいよ。題はまず『妖婦』かな。こりゃ一世一代の傑作になるよ」・・・ 織田作之助 「世相」
・・・ 一、以上に述べたような経済事情の悪化は、小規模な出版業者の没落と、没落しまいとするもがきから一層粗悪なエロ・グロ出版を行わせる結果になった。日本出版協会は、日本民主化のために有益な出版を鼓舞しようとするたてまえから、さる六月エロ・・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・エロ・グロ、剣劇の興行政策をこれまで日本で最もいい制作をしていた東宝にもちこんで、近代的な社会感覚をもっている従業員たちを追いはらっている渡辺銕蔵が、教員の資格審査委員の一人であるという事実は、見のがされてはならない。手のこんだ日本の民主化・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・エロ・グロ出版がはんらんしているとき、わたしの作品集が二十数万部、評論集十余万部が読まれているという事実は、むしろ、もっともっと民主作家はよまれてよい、という面からこそとりあげるべきことである。 文化反動とのたたかいにおいて、階級的人間・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
・・・だが、吉行エイスケが中国の日常風景を作品に盛る場合、作者にとって主要な精髄は、銀座にあるとは種類の変った現代中国エロ・グロ風景だ。資本主義化された海港都市にあって一層グロテスクであるところの中国苦力に乞食。エロチックであるところの植民地中国・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・いわゆる良家の主婦たちがむすめやむすこと一しょに、それをエロ・グロ雑誌だとも感じないで、いかがわしい雑誌を平気で見ているような無感覚。どんなすじからであろうと、物と金がながれこめば、そのみなもとをせんさくしないのが利口というような社会的責任・・・ 宮本百合子 「民法と道義上の責任」