たか‐み【高み】例文一覧 22件

  1. ・・・ 物の枯れてゆく香いが空気の底に澱んで、立木の高みまではい上がっている「つたうるし」の紅葉が黒々と見えるほどに光が薄れていた。シリベシ川の川瀬の昔に揺られて、いたどりの広葉が風もないのに、かさこそと草の中に落ちた。 五、六丁線路を伝・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  2. ・・・黒石でつつまれた高みの上に、りっぱな赤松が四、五本森をなして、黄葉した櫟がほどよくそれにまじわっている。東側は神社と寺との木立ちにつづいて冬のはじめとはいえ、色づいた木の葉が散らずにあるので、いっそう景色がひきたって見える。「じいさん、・・・<伊藤左千夫「河口湖」青空文庫>
  3. ・・・町の高みには皇族や華族の邸に並んで、立派な門構えの家が、夜になると古風な瓦斯燈の点く静かな道を挾んで立ち並んでいた。深い樹立のなかには教会の尖塔が聳えていたり、外国の公使館の旗がヴィラ風な屋根の上にひるがえっていたりするのが見えた。しかしそ・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  4. ・・・それらの人家から見れば、自分は高みの舞台で一人滑稽な芸当を一生懸命やっているように見えるにちがいなかった。――誰も見ていなかった。変な気持であった。 自分の立ち上ったところはやや安全であった。しかし自分はまだ引返そうともしなかったし、立・・・<梶井基次郎「路上」青空文庫>
  5. ・・・真と美とモラルの高みへとわれわれを引き上げてくれるのである。かような人間教育をなし得る書物こそ最良の書であり、青年がたましいを傾けて愛読すべきものである。 われわれが読書に意を注がぬことの最も恐ろしいのは、かような人間教育の書にふれる機・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  6. ・・・ やがて自分はのこのこと物置の方へ行って、そこから稲妻の形に山へついた切道を、すたすたと片跣足のままで駈け上る。高みに立てば沖がずっと見えるのである。そして、隣村の埠頭場から出る帆があれば、それが藤さんの船だと思ったからである。上れるだ・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  7. ・・・自分が近寄ったのも気が付かぬか、一心に拾っては砂浜の高みへ投げ上げている。脚元近く迫る潮先も知らぬ顔で、時々頭からかぶる波のしぶきを拭おうともせぬ。 何処の浦辺からともなく波に漂うて打上がった木片板片の過去の歴史は波の彼方に葬られて、こ・・・<寺田寅彦「嵐」青空文庫>
  8. ・・・カラフトでは向こうの高みから熊に「どなられて」青くなって逃げだしたこともあるという。えらい大きな声をして二声「どなった」そうである。 テント内の夜の燈火は径一寸もあるような大きなろうそくである。風のあるときは石油ランプはかえって消えやす・・・<寺田寅彦「小浅間」青空文庫>
  9. ・・・その絵の景色には、普通日本人の頭にある京都というものは少しも出ていなくて、例えばチベットかトルキスタンあたりのどこかにありそうな、荒涼な、陰惨な、そして乾き切った土地の高みの一角に、「屋根のある棺柩」とでも云いたいような建物がぽつぽつ並んで・・・<寺田寅彦「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  10. ・・・まるで丈ぐらいある草をわけて高みになったり低くなったり、どこまでも走りました。 嘉助はもう足がしびれてしまって、どこをどう走っているのかわからなくなりました。 それからまわりがまっ蒼になって、ぐるぐる回り、とうとう深い草の中に倒れて・・・<宮沢賢治「風の又三郎」青空文庫>
  11. ・・・ その時、向うの農夫室のうしろの雪の高みの上に立てられた高い柱の上の小さな鐘が、前后にゆれ出し音はカランカランカランカランとうつくしく雪を渡って来ました。今までじっと立っていた馬は、この時一緒に頸をあげ、いかにもきれいに歩調を踏んで、厩・・・<宮沢賢治「耕耘部の時計」青空文庫>
  12. ・・・けれども又すぐ向うの樺の木の立っている高みの方を見るとはっと顔色を変えて棒立ちになりました。それからいかにもむしゃくしゃするという風にそのぼろぼろの髪毛を両手で掻きむしっていました。 その時谷地の南の方から一人の木樵がやって来ました。三・・・<宮沢賢治「土神ときつね」青空文庫>
  13. ・・・というのは、チェホフは、しまいにはいつだって、高みから見下したような憫笑で、諷刺の対象を許してしまっている。 下らぬもの、卑しいものに対して、勝利する新しい世界観というものを明瞭に把握してわれわれに示してはくれない。 そこに、彼の生・・・<宮本百合子「新たなプロレタリア文学」青空文庫>
  14. ・・・ 師範卒業生佐田の安直ぶりが、階級的発展の端緒としての意味をもつ未熟さ、薄弱さとして高みから扱われているのではなく、作者須井自身にとっても弱い一点であることは、「幼き合唱」のところどころの文章にうかがわれる。大体作者はいわゆる筆が立つと・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>
  15. ・・・ 庭へついと、遠い遠い彼方の空の高みから、一羽の小鳥が飛んで来た。すっと、軽捷な線を描いて、傍の檜葉の梢に止った。一枝群を離れて冲って居る緑の頂上に鷹を小型にしたような力強い頭から嘴にかけての輪廓を、日にそむいて居る為、真黒く切嵌めた影・・・<宮本百合子「餌」青空文庫>
  16. ・・・亭のある高みの下を智恩院へゆく道が続いていた。その道を越して、もっと広い眺めが展けている。下の道を時々人が通り、亭の附近は静かであった。花の咲かない躑躅の植込みの前にベンチがあり、彼等が行ったとき、そう若くない夫婦がかけていい心地そうに目前・・・<宮本百合子「高台寺」青空文庫>
  17. ・・・ 大雨があがる、 晴天 碧い空に白い雲、西風爽か 山の松の幹もパラリとしてすがしく篁の柔かい若青葉がしなやかに瑞々しく重く見える 多賀さんの下の高みで、家組が出来て、人が働いている 白シャツ姿。 廻り椽。浅い池 椽の・・・<宮本百合子「Sketches for details Shima」青空文庫>
  18. ・・・アルプス登攀列車は、一刻み、一刻み毎に、しっかり噛み合って巨大な重量を海抜数千メートルの高み迄ひき上げてゆく堅牢な歯車をもっている。わたし達が近代的外皮に装われた最も悪質な封建性から自身の全生活を解放して、民主主義に立つ眺望ひろい人生を確保・・・<宮本百合子「「どう考えるか」に就て」青空文庫>
  19. ・・・ 寺の方がすこし高みになっていて、牛のいる牧場はかなり下に見おろせた。今思えばいかにも市中の牧場らしく、ただ平地に柵をめぐらされているだけのその牧場だったが、そこに、いつも四五頭の乳牛が出ていた。白と飴色のまだら、白黒のまだら。ちょっと・・・<宮本百合子「道灌山」青空文庫>
  20. ・・・ いつしかレールは左右に幾条も現れ、汽車は高みを走って、低いところに、混雑して黒っぽい町並が見下せた。コールターで無様に塗ったトタン屋根の工場、工場、工場とあると思うと、一種異様な屑物が山積した空地。水たまり。煤をかぶった狭い不規則な地・・・<宮本百合子「東京へ近づく一時間」青空文庫>
  21. ・・・道のつき当りから山手にかかって、遙か高みの新緑の間に、さっぱりした宏壮な洋館が望まれる。ジャパン・ホテルと云うのはあれだろう。海の展望もありなかなかよさそうなところと、只管支那街らしい左右の情景に注意を奪われて居ると、思いがけない緑色の建物・・・<宮本百合子「長崎の一瞥」青空文庫>
  22. ・・・せっかくのぼった高みから、また引きおろされたような気持ちがしたのです。 彼がもしこの土下座の経験を彼の生活全体に押しひろめる事ができたら、彼は新しい生活に進出することができるでしょう。彼はその問題を絶えず心で暖めています。あるいはい・・・<和辻哲郎「土下座」青空文庫>