ちよ‐がみ【千代紙】例文一覧 17件

  1. ・・・けれどももう少し注意して御覧になると、どの紙屑の渦の中にも、きっと赤い紙屑が一つある――活動写真の広告だとか、千代紙の切れ端だとか、乃至はまた燐寸の商標だとか、物はいろいろ変ていても、赤い色が見えるのは、いつでも変りがありません。それがまる・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  2. ・・・外の春日が、麗かに垣の破目へ映って、娘が覗くように、千代紙で招くのは、菜の花に交る紫雲英である。…… 少年の瞼は颯と血を潮した。 袖さえ軽い羽かと思う、蝶に憑かれたようになって、垣の破目をするりと抜けると、出た処の狭い路は、飛々の草・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  3. ・・・ いずれ、金目のものではあるまいけれども、紅糸で底を結えた手遊の猪口や、金米糖の壷一つも、馬で抱き、駕籠で抱えて、長い旅路を江戸から持って行ったと思えば、千代紙の小箱に入った南京砂も、雛の前では紅玉である、緑珠である、皆敷妙の玉である。・・・<泉鏡花「雛がたり」青空文庫>
  4. ・・・けばけばしく彩った種々の千代紙が、染むがごとく雨に縺れて、中でも紅が来て、女の瞼をほんのりとさせたのである。 今度は、一帆の方がその傍へ寄るようにして、「どっちへいらっしゃる。」「私?……」 と傘の柄に、左手を添えた。それが・・・<泉鏡花「妖術」青空文庫>
  5. ・・・四 家に帰ると、妹のみつ子は一人で千代紙を出して遊んでいました。「兄さん、どこへいってきたの?」「いま、僕、学者にあってきたのだよ。」と、信吉は得意になって、「僕の拾った勾玉や、土器が、学問のうえに役立つというん・・・<小川未明「銀河の下の町」青空文庫>
  6. ・・・そしてこのごろは、げたの鼻緒を立てたり、つめを切ったりするときだけにしか使われなかったけれど、年とったはさみは、若いころ、お嬢さんが人形の着物をつくるときに、美しい千代紙や、折り紙を切ったり、また、お母さんが、お仕事をなさるときに使われた、・・・<小川未明「古いはさみ」青空文庫>
  7. ・・・そのころの末子はまだ人に髪を結ってもらって、お手玉や千代紙に余念もないほどの小娘であった。宿屋の庭のままごとに、松葉を魚の形につなぐことなぞは、ことにその幼い心を楽しませた。兄たちの学校も近かったから、海老茶色の小娘らしい袴に学校用の鞄で、・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  8. ・・・この机辺のどろどろの洪水を、たたきころして凝結させ、千代紙細工のように切り張りして、そうして、ひとつの文章に仕立てあげるのが、これまでの私の手段であった。けれども、きょうは、この書斎一ぱいのはんらんを、はんらんのままに掬いとって、もやもや写・・・<太宰治「古典竜頭蛇尾」青空文庫>
  9. ・・・ 千代紙貼リマゼ、キレイナ小箱、コレ、何スルノ? ナンニモシナイ、コレダケノモノ、キレイデショ? 花火一パツ、千円以上、ワザワザ川デ打チアゲテ何スルノ? 着物、ハダカヲ包メバ、ソレデイイ、柄モ、布地モ、色合イモ、ミンナ意味ナイ、・・・<太宰治「走ラヌ名馬」青空文庫>
  10. ・・・や、わが国特産の千代紙人形映画や、またミッキーマウスやうさぎのオスワルドやあるいはビンボーなどというおとぎ話的ヒーローを主題とした線画の発声漫画のごときものがある。まずい名称であるがかりにこれらを人工映画という名前で一括することにする。・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  11. ・・・こういう珍しい千代紙式に多様な模様を染め付けられた国の首都としての東京市街であってみれば、おもちゃ箱やごみ箱を引っくり返したような乱雑さ、ないしはつづれの錦の美しさが至るところに見いだされてもそれは別に不思議なことでもなければ、慨嘆するにも・・・<寺田寅彦「カメラをさげて」青空文庫>
  12. ・・・末の冬子は線香花火や千代紙やこまごました品を少しずつしか買わないので、配当されたわずかな金が割合に長く使いでがあるようであった。そういう事実は多少小さな姉や兄の注意をひいているらしかった。 学校へ出ている子等は毎朝復習をしていた。まだ幼・・・<寺田寅彦「小さな出来事」青空文庫>
  13. ・・・去年の枯れ菊が引かれたままで、あわれに朽ちている、それに千代紙の切れか何かが引っ掛かって風のないのに、寒そうにふるえている。手水鉢の向かいの梅の枝に二輪ばかり満開したのがある。近づいてよく見ると作り花がくっつけてあった。おおかた病人のいたず・・・<寺田寅彦「どんぐり」青空文庫>
  14. ・・・ この間中、田舎に行っていたうち何かで、或る作家が、女性の作品はどうしても拵えもので、千代紙のようでなければ、直に或る既成の哲学的概念に順応して行こうとする傾向がある、と云うような意味の話をされた事を読んだ。 これは新しい評言ではな・・・<宮本百合子「概念と心其もの」青空文庫>
  15. ・・・ 外側のケースに千代紙なんか貼ってしまって益妙ですが、これはいつか妹のいたずらで御免下さい。 粉の白粉は変質したりしないでしょうか、その点も自信ございません。万一パサパサでしたら悪いと気がかりですが、あけては僅の興も失われてしまいま・・・<宮本百合子「日記・書簡」青空文庫>
  16.  町から、何処に居ても山が見える。その山には三月の雪があった。――山の下の小さい町々の通りは、雪溶けの上へ五色の千代紙を剪りこまざいて散らしたようであった。製糸工場が休みで、数百の若い工女がその日は寄宿舎から町へぶちまけられ・・・<宮本百合子「町の展望」青空文庫>
  17. ・・・ 私は、千代紙と緋縮緬と糸と鋏と奉書を出しながら云った。器用な手つきをして紙を切ってさして居たかんざしの銀の足で、おけいちゃんはしわを作った。それに綿を入れてくくって唐人まげの根元に緋縮緬をかけてはでな色の着物をきせて、帯をむすんでおひ・・・<宮本百合子「芽生」青空文庫>