と・う〔とふ〕【問う】例文一覧 31件

  1. ・・・家族主義の上に立つものとせば、一家の主人たる責任のいかに重大なるかは問うを待たず。この一家の主人にして妄に発狂する権利ありや否や? 吾人はかかる疑問の前に断乎として否と答うるものなり。試みに天下の夫にして発狂する権利を得たりとせよ。彼等はこ・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  2. ・・・ 近頃心して人に問う、甲冑堂の花あやめ、あわれに、今も咲けるとぞ。 唐土の昔、咸寧の吏、韓伯が子某と、王蘊が子某と、劉耽が子某と、いずれ華冑の公子等、相携えて行きて、土地の神、蒋山の廟に遊ぶ。廟中数婦人の像あり、白皙にして甚だ端正。・・・<泉鏡花「一景話題」青空文庫>
  3. ・・・汝は安心してその決行ができるかと問うて見る。自分の心は即時に安心ができぬと答えた。いよいよ余儀ない場合に迫って、そうするより外に道が無かったならばどうするかと念を押して見た。自分の前途の惨憺たる有様を想見するより外に何らの答を為し得ない。・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  4. ・・・「そうですとも、私の方の問題は役者になればいいので、吉弥さんがその青木という人と以後も関係があろうと、なかろうと、それは問うところはないのです」と、僕の言葉は、まだ金の問題には接近していなかっただけに、うわべだけは、とにかく、綺麗なもの・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  5. ・・・多分そのせいで、女学生の方が何か言ったり、問うて見たりしたいのを堪えているかと思われる。 遠くに見えていた白樺の白けた森が、次第にゆるゆると近づいて来る。手入をせられた事のない、銀鼠色の小さい木の幹が、勝手に曲りくねって、髪の乱れた頭の・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  6. ・・・と、その青年は、問うたのであります。いつか、約束にもらった指輪は、いまはかえって、邪魔となったのでした。彼女は、顔を赤くして、指輪をぬくと、海の中へ投げてしまいました。「これで、いいのですか。」 かれらは朗らかに笑いました。内気の娘・・・<小川未明「海のまぼろし」青空文庫>
  7. ・・・の真価を世に問う、いわば坂田の生涯を賭けた一生一代の対局であった。昭和の大棋戦だと、主催者の読売新聞も宣伝した。ところが、坂田はこの対局で「阿呆な将棋をさして」負けたのである。角という大駒一枚落しても、大丈夫勝つ自信を持っていた坂田が、平手・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  8. ・・・技術の巧拙は問う処でない、掲げて以て衆人の展覧に供すべき製作としては、いかに我慢強い自分も自分の方が佳いとは言えなかった。さなきだに志村崇拝の連中は、これを見て歓呼している。「馬も佳いがコロンブスは如何だ!」などいう声があっちでもこっちでも・・・<国木田独歩「画の悲み」青空文庫>
  9. ・・・いかに問うかということ、その問い方の大いさ、深さ、強さ、細かさがやがてその解答のそれらを決定する条件である。故に倫理学の書をまだ一ページもひるがえさぬ先きに、倫理的な問いが研究者の胸裡にわだかまっていなければならぬ。そして実はその倫理的な問・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  10. ・・・「なんぼ広い東京じゃとて問うて行きゃ、どこいじゃって行けんことはないわいや。」 そして、ある朝早く、両人は出かけた。「お前等両人でどこへ行けるもんか。」出かけしなに清三は不安らしく止めた。「いゝや、大事ない、うら等二人で行く・・・<黒島伝治「老夫婦」青空文庫>
  11. ・・・ン、これが別れ別れて両方後家になっていたのだナ、しめた、これを買って、深草のを買って、両方合わせれば三十両、と早くも腹の中で笑を含んで、価を問うと片方の割合には高いことをいって、これほどの物は片方にせよ稀有のものだからと、なかなか廉くない。・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  12. ・・・とが無いからである。戸が開くと、一番先きに顔を出したスパイが、妹の名を云って、いるかときいた。そのスパイは前から顔なじみだった。母は「いるよ。」と、当り前で云ってから、「あれがどうしたのかね?」と問うた。スパイはそれには何も云わずに、「いる・・・<小林多喜二「母たち」青空文庫>
  13. ・・・と藤さんが問う。小母さんも、「私ももう五六度写ったはずだがねえ。いつできるんだろう。まだ一枚もくれないのね」と突っ込む。それから小母さんは、向いの地方へ渡って章坊と写真を撮った話をする。章坊は、「今度は電話だ」と言って、二つの板紙の筒を・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  14. ・・・多分そのせいで、女学生の方が、何か言ったり、問うて見たりしたいのを堪えているかと思われる。 遠くに見えている白樺の白けた森が、次第にゆるゆると近づいて来る。手入をせられた事の無い、銀鼠色の小さい木の幹が、勝手に曲りくねって、髪の乱れた頭・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  15. ・・・そして何の権利があって、そんな事を問うのだか分からないとさえ思う。 とうとう喧嘩をした。ドリスは喧嘩が大嫌いである。喧嘩で、一たび失ったこの女の歓心を取り戻すことは出来ない。それはポルジイにも分かっているから、我ながら腑甲斐なく思う。し・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  16. ・・・一兵卒が死のうが生きようがそんなことを問う場合ではなかった。渠は二人の兵士の尽力のもとに、わずかに一盒の飯を得たばかりであった。しかたがない、少し待て。この聯隊の兵が前進してしまったら、軍医をさがして、伴れていってやるから、まず落ち着いてお・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  17. ・・・とおれは問うた。「昨日侯爵のお落しになった襟でございます。」こいつまでおれの事を侯爵だと云っている。 おれはいい加減に口をもぐつかせて謝した。「町の掃除人が持って参ったのでございます。その男の妻が拾ったそうでございます。四十ペン・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  18. ・・・これに達した径路は問う所ではないのである。実際科学上の知識を絶対的または究極的なものと信じる立場から見ればこれも当然な事であろう。また応用という点から考えてもそれで十分らしく思われるのである。しかしこの傾向が極端になると、古いものは何物でも・・・<寺田寅彦「科学上の骨董趣味と温故知新」青空文庫>
  19. ・・・事業の成績は必ずしも問うところでない。最後の審判は我々が最も奥深いものによって定まるのである。これを陛下に負わし奉るごときは、不忠不臣のはなはだしいものである。 諸君、幸徳君らは時の政府に謀叛人と見做されて殺された。諸君、謀叛を恐れては・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  20. ・・・ 六月下旬の或日、めずらしく晴れた梅雨の空には、風も凉しく吹き通っていたのを幸、わたしは唖々子の病を東大久保西向天神の傍なるその居に問うた。枕元に有朋堂文庫本の『先哲叢談』が投げ出されてあった。唖々子は英語の外に独逸語にも通じていたが、・・・<永井荷風「梅雨晴」青空文庫>
  21. ・・・一世師に問うて云う、分子は箸でつまめるものですかと。分子はしばらく措く。天下は箸の端にかかるのみならず、一たび掛け得れば、いつでも胃の中に収まるべきものである。 また思う百年は一年のごとく、一年は一刻のごとし。一刻を知ればまさに人生を知・・・<夏目漱石「一夜」青空文庫>
  22. ・・・世間或は説あり、父母の教訓は子供の為めに良薬の如し、苟も其教の趣意にして美なれば、女子の方に重くして男子の方を次ぎにするも、其辺は問う可き限りに非ずと言う者あれども、大なる誤なり。元来人の子に教を授けて之を完全に養育するは、病人に薬を服用せ・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  23. ・・・あるいは、お七は、裁判所で、裁判官より、言い遁れる言いようを教えてもろうたけれど、それには頓着せず、恋のために火をつけたと真直に白状してしもうたから、裁判官も仕方なしに放火罪に問うた、とも伝えて居る。あるいは想像の話かもしれぬが想像でも善く・・・<正岡子規「恋」青空文庫>
  24. ・・・「偽を云うとそれも罪に問うぞ。」「いいえ。そのときは二十日の月も出ていましたし野原はつめくさのあかりでいっぱいでした。」「そんなことが証拠になるか。そんなことまでおれたちは書いていられんのだ。」「偽だとお考えになるならどこな・・・<宮沢賢治「ポラーノの広場」青空文庫>
  25. ・・・ 責任を問うという意味での警告であるならば、おのずから区別の過程をふまえなければならないだろう。 由紀子の背中の赤子は、何故圧死しなければならなかったか。ただ一つの「何故」ではあるが、この一語こそ、戦争犯罪的権力に向って、七千万人民・・・<宮本百合子「石を投ぐるもの」青空文庫>
  26. ・・・かれは問うた、『ここにブレオーテのアウシュコルンがいるかね。』 卓の一端に座っていたアウシュコルンは答えた、『わしはここにいるよ。』 そこで伍長はまた、言った、『アウシュコルン、お前ちょっとわたしといっしょに役場に来てく・・・<著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩「糸くず」青空文庫>
  27. ・・・ 母はまだもらったばかりのよめが勝手にいたのをその席へ呼んでただ支度が出来たかと問うた。よめはすぐに起って、勝手からかねて用意してあった杯盤を自身に運んで出た。よめも母と同じように、夫がきょう切腹するということをとうから知っていた。髪を・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  28. ・・・とうとうノイペスト製糸工場の前に出た。ツォウォツキイは工場で「こちらで働いていました後家のツァウォツキイと申すものは、ただ今どこに住まっていますでしょうか」と問うた。 住まいは分かった。ツァウォツキイはまた歩き出した。 ユリアは労働・・・<著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外「破落戸の昇天」青空文庫>
  29. ・・・目的を問う愚もなさず、過去を眺める弱さもない。ただ一点を見詰めた感覚の鍔競り合いに身を任せて、停止するところまで行くのである。未来は鵜の描く猛猛しい緊張の態勢にあって、やがて口から吐き流れる無数の鮎の銀線が火に映る。私は翌日鵜匠から鵜をあや・・・<横光利一「鵜飼」青空文庫>
  30. ・・・男は響の好い、節奏のはっきりしたデネマルク語で、もし靴が一足間違ってはいないかと問うた。 果して己は間違った靴を一足受け取っていた。男は自分の過を謝した。 その時己はこの男の名を問うたが、なぜそんな事をしたのだか分からない。多分体格・・・<著:ランドハンス 訳:森鴎外「冬の王」青空文庫>