・・・鸚鵡の持ち主はどんな女だか知らないがきっと、海山千年の女郎だろうと僕は鑑定する。」「まアそんな事だろう、なにしろ後家ばあさん、大いに通をきかしたつもりで樋口を遊ばしたからおもしろい、鷹見君のいわゆる、あれが勝手にされてみたのだろうが、鸚・・・ 国木田独歩 「あの時分」
・・・殊に新聞紙の論説の如きは奇想湧くが如く、運筆飛ぶが如く、一気に揮洒し去って多く改竄しなかったに拘らず、字句軒昂して天馬行空の勢いがあった。其一例を示せば、 我日本国の帝室は地球上一種特異の建設物たり。万国の史を閲読するも此の如き建設・・・ 幸徳秋水 「文士としての兆民先生」
・・・は何と答えんかと予審廷へ出る心構えわざと燭台を遠退けて顔を見られぬが一の手と逆茂木製造のほどもなくさらさらと衣の音、それ来たと俊雄はまた顫えて天にも地にも頼みとするは後なる床柱これへ凭れて腕組みするを海山越えてこの土地ばかりへも二度の引眉毛・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・いの伯父が、酔余の興にその家の色黒く痩せこけた無学の下婢をこの魚容に押しつけ、結婚せよ、よい縁だ、と傍若無人に勝手にきめて、魚容は大いに迷惑ではあったが、この伯父もまた育ての親のひとりであって、謂わば海山の大恩人に違いないのであるから、その・・・ 太宰治 「竹青」
・・・訳語妥当ならざるは自らこれを知るといえども匆卒の際改竄するに由なし。君子幸に正を賜え。升 附記 正岡子規 「ベースボール」
・・・ 白衣の祭官二人は二親の家を、同胞の家を出て行こうとする霊に優い真心のあふれる祭詞を奉り海山の新らしい供物に□□(台を飾って只安らけく神々の群に交り給えと祈りをつづける。 御玉串を供えて、白絹に被われる小さい可愛らしい棺の前にぬかず・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・ 大衆の中の進歩的要素と知識人が、懺悔的な悔恨的な感傷で大衆を一般化して考え、それに対し勝な昨今の弱点を餌として、三木清氏のような全体的の哲学が闊歩するのであるし、亀井貫一郎氏の速記録改竄問題をひきおこすのである。 ヒューマニズムは・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
出典:青空文庫