・・・そのなかには当然言論出版の官僚統制をもたらす用紙割当事務庁法案があり、ラジオ法案がある。国会の人さえ知らないうちに用意されたこれらの法案は、形式上国会の屋根をくぐっただけで、事実上は官僚の手でこねあげられ、出来上った法律として権力をもってわ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・それはやっぱり裁判の民主化とは、いろいろな官僚的でなく裁判をしようということで、また被告の人権を重んじようとする、平沢の事件なんかで皆が非常に困った立場になったというようなことから、へんてこりんな基本的人権の尊重のしかたで、この浦和充子の事・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・という字は、官僚的な、役所、「お上」のことめいたものばかりを意味するようになってしまいました。 私という字は、何でも民間のもの、よくてもわるくても公よりは一段力のよわい、社会の立場の低いものと、うけとられるようになりました。 民主的・・・ 宮本百合子 「公のことと私のこと」
・・・その反面に、明治が、その現実において、どんなにまで封建的であり、身分の観念と結びついた官僚主義が横行していたかを語っているのである。 市民社会を土台としてそこから近代化した日本ではなかった、という一つの事実は、明治以来の日本の文化に、重・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・キュリー夫人は戦争の長びくことが分るにつれ、あらゆる手段を講じて、官僚と衝突してそれを説得し、個人の援助も求めて自動車を手に入れ、それをつぎつぎに研究所で装置して送り出した。そのようにして集められた車は二十台あった。マリアはその一台を自分の・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ 官僚統計さえ、その多くは焼きすてられなければならなかったような日本の実状へ、新しく響く民主化の声は、世論、というものの意味を人々に知らせはじめた。人民がどんな意見を云おうにも口をふさがれていた数年がつづいた日本では、公然と自分の意見を・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・けれども、それに対してとられた抵抗と防衛の手段は、故人の官僚としての地位の必然によって、一国鉄従業員の場合とは全く反対にあらわれた。世間を疑惑のうちにのこしたまま、労働組合や共産党への毒素のような悪宣伝をみなぎらしたまま――遺族自身がのぞむ・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・ 漱石は、今日の歴史から顧みれば、多くの限界の見える作家であるが、知識人の独立性、自主性を主張することにおいては、なかなか強情であった。官僚にこびたりすることは、文学者のするべきことでないという態度をもっていた。東京帝大教授として、文部・・・ 宮本百合子 「行為の価値」
・・・工場、役所の内部では、新しい溌溂たる生産能率増進のために、官僚主義排撃が、盛に行われた。 反革命的異分子の清掃が、あらゆる部門にわたって積極的に行われはじめた。 間断なき週間制によって、五日週間を働くようになった一般勤労者は、職場職・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・また、あらゆる面にはびこっている日本の封建的な官僚主義やセクト主義が、法隆寺の壁画保存にもからんでいて「法隆寺グループ」というものの存在も語られた。散々不評だった下條文相をやめさせるきっかけに、吉田首相は法隆寺失火責任を負わせ、火事は政治漫・・・ 宮本百合子 「国宝」
出典:青空文庫