・・・もしこれが可能とすれば、洋上に浮き観測所の設置ということもあながち学究の描き出した空中楼閣だとばかりは言われないであろう。五十年百年の後にはおそらく常識的になるべき種類のことではないかと想像される。 人類が進歩するに従って愛国心も大・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・ 以上はただ一個の学究の私見で一つの理想に過ぎない。多数の学者ことに教育者の側から見れば不都合な点も多くあるかもしれないし、自分でも十分に意を尽さぬために誤解を生じはせぬかと思う点もあるが、ともかくも思うままを誌して大方の叱正を待つので・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・ 以上はただ、放送事業の実際にうとい一学究のはなはだしい空想に過ぎないのであるが、未来の放送に関する可能性についての一つの暗示として、思うままをしるしてみた次第である。 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・しかし心理学的連想の実例を捜している一学究としてあらゆる芸術的の立場を離れて見たやぶにらみの目には、灰汁のしずくと油のしたたりとの物理的肖似がすぐに一つの問題の焦点となるであろう。また灰汁のしずくが次第にその流量を減じてとうとう出なくなって・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・それについては少し学究めきますが、日本とか現代とかいう特別な形容詞に束縛されない一般の開化から出立してその性質を調べる必要があると考えます。御互いに開化と云う言葉を使っておって、日に何遍も繰返しているけれども、はたして開化とはどんなものだと・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・で狐の生徒は一学級ずつだんだん教室に入ったらしいのです。 それからしばらくたって、どの教室もしいんとなりました。先生たちの太い声が聞えて来ました。「さあではご案内を致しましょう。」狐の校長さんは賢そうに口を尖らして笑いながら椅子から・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・みんなは学級順に年下の者を前にして腰をかける。大きい角テーブルがあって、そこにアルミニュームの鉢、サジなどがキレイにうんと積み重ねてある。 私たちは、一番年下の級の子供たちの間に挾って坐っている。子供たちがこっちをみる。私たちも子供たち・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
・・・彼のような穏当な学究さえも彼の理性が超国家主義と絶対主義に服従しないで立っているという理由で起訴され裁判された。河合栄治郎が学者としての良心の最低線を守ろうとした抵抗の精神は、人事院規則に対する南原の線を守る人たちの抵抗でもある。 日本・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・への抗議と、人間的な共同精神を失って専門化・瑣末化しすぎた現代学究への健康性の要求として、フランス支部から提出された新国際百科辞典の編輯を決定し、三ヵ年無裁判で投獄されていたドイツのオシツキイをノオベル平和賞の候補者として決定した。七月には・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ だが、ここに微妙な現象が、学級の進むにつれて起って来る。 級の小さい頃は漠然と仲よしで一組になっていた男の子と女の子とが七年生ぐらいになると、一種の発展的分化をおこす。 小学校の退けどき、賑やかな一団にまぎれ込んで歩いて見ると・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
出典:青空文庫