・・・一口に云って、従来の作品より規模の大きな、感情に於ても局面においても人生のより深いところに触れた、度胸の坐った作品が求められているのである。 ところが、月々現われる作品の現実に即して見ると、そういう一般の要求を直接反映している作品という・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・そして、その作品にあらわれる主人公たちがそれぞれ多数のものの集約的な人格化であり、歴史の局面へ積極的に働きかけようとする時代の典型であるという文学の世界の現実で、広汎な読者の生活に結ばれてゆくものであろうとした。 この文学の動きの方向で・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・しかし、一人の人としてのうまみというようなものが、多難多岐な客観的局面をどう展開させ得るだろうか。二つのことは常に必ずしも一致し得ないことを、過去の歴史も多くの実例で語っている。 桜内蔵相の答えかたには、首相とまるでちがう一種の話術のよ・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・西洋の女のひとは、見つくろって下さい、という感情を人生のいろんな局面でずっと少ししか持っていないような生活の姿である。 この頃は不思議な世の中で、本屋が見つくろいの注文を受けた話をまたぎきした。或る本屋へ電話で、もしもしこちらはどこそこ・・・ 宮本百合子 「見つくろい」
出典:青空文庫