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・・・入口の上框ともいうべきところに、いと大なる石を横たえわたして崩れ潰えざらしめんとしたる如きは、むかしの人もなかなかに巧みありというべし。寒月子の図も成りければ、もとのところに帰り、この塚より土器の欠片など出したる事を耳にせざりしやと問えば、・・・
幸田露伴
「知々夫紀行」
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・・・と前の女は驚いて、燭台を危く投げんばかりに、膝も腰も潰え砕けて、身を投げ伏して面を匿して終った。「にッたり」と男は笑った。 主人は流石に主人だけあった。これも驚いて仰反って倒れんばかりにはなったが、辛く踏止まって、そして踏止・・・
幸田露伴
「雪たたき」