・・・山が焼ければ間接には飛行機や軍艦が焼けたことになり、それだけ日本が貧乏になり国防が手薄になるのである。それだけ国民全体の負担は増す勘定である。 いずれにしても今回のような大火は文化をもって誇る国家の恥辱であろうと思われる。昔の江戸でも火・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・ 船の高さよりも、水の深さの方が、深い場合には、船のどこかに穴さえ開けば、いつでも沈むことが能きる。軍艦の場合などでは、それをどうして沈めるか、どうして穴を開けるかを、絶えず研究していることは、誰だって知ってることだ。 軍艦とは浮ぶ・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・ たとえば海陸軍においても、軍艦に乗りて海上に戦い、馬に跨て兵隊を指揮するは、真に軍人の事にして、身みずから軍法に明らかにして実地の経験ある者に非ざれば、この任に堪えず。されども海陸軍、必ずしも軍人のみをもって支配すべからず。軍律の裁判・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・この人は幕府の末年に勝氏と意見を異にし、飽くまでも徳川の政府を維持せんとして力を尽し、政府の軍艦数艘を率いて箱館に脱走し、西軍に抗して奮戦したれども、ついに窮して降参したる者なり。この時に当り徳川政府は伏見の一敗復た戦うの意なく、ひたすら哀・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・まっ青な小樽湾が一目だ。軍艦が入っているので海軍には旗も立っている。時間があれば見せるのだがと武田先生が云った。ベンチへ座ってやすんでいると赤い蟹をゆでたのを売りに来る。何だか怖いようだ。よくあんなの食べるものだ。 *・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・僕はまず立派な軍艦の絵を書くそれから水車のけしきも書く。けれども早く耗ってしまうと困るなあ、こう考えたときでした鉛筆が俄かに倍ばかりの長さに延びてしまいました。キッコはまるで有頂天になって誰がどこで何をしているか先生がいま何を云っているかも・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
・・・最近の「軍艦大和」の問題は、文学作品の形をとっていたから、文学者たちの注目を集め、批判をうけましたが、ひきつづきいくつかの形で二・二六実記が出て来たし、丹羽文雄の最後の御前会議のルポルタージュ、その他いわゆる「秘史」が続々登場しはじめました・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・大きい青桐の下に大タライを出してそこへゴムの魚や軍艦を浮べ、さかんに活躍です。スエ子の糖尿がいい塩梅にこの頃は少しましです。でもずっと注射して居ります。私はオリザニンの注射カムフルの注射で飽きあきしてスエ子の一日に二度の注射を傍目にも重荷の・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ルポルタージュであるにはちがいないが、したがってそれはあったことをあったとおりに書いているといえるわけだが、例えば「軍艦大和」という作品が問題になったように、題材に向う態度が、戦争当時の好戦的な亢奮した雰囲気をそのままとり戻しているようなも・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・この間も、それで喧嘩をしたのですが、日本の軍艦も船も、みな間違っているのです。船体の計算に誤算があるので、おれはそれを直してみたのですが、おれの云うようにすれば、六ノット速力が迅くなる、そういくら云っても、誰も聞いてはくれないのですよ。あの・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫