・・・どうしてそんな変なものができたというなら、そいつは蓋し簡単だ。ええ、ここに一つの火山がある。熔岩を流す。その熔岩は地殻の深いところから太い棒になってのぼって来る。火山がだんだん衰えて、その腹の中まで冷えてしまう。熔岩の棒もかたまってしまう。・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・人類の食料と云えば蓋し動物植物鉱物の三種を出でない。そのうち鉱物では水と食塩とだけである。残りは植物と動物とが約半々を占める。ところが茲にごく偏狭な陰気な考の人間の一群があって、動物は可哀そうだからたべてはならんといい、世界中にこれを強いよ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ ジイドは、ミドルトン・マリの評によれば「ほとんど取るに足らない本質的な業績を基礎として、しかも彼のようにヨーロッパ的人物となった作家は蓋し異例と云うべきであろう」ところの作家である。ジイドの箇人主義は、それが日本へも移植されたフェルナ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫