・・・もともと実験の教授というものは、軍隊の教練や昔の漢学者の経書の講義などのように高圧的にするべきものではなく、教員はただ生徒の主動的経験を適当に指導し、あるいは生徒と共同して新しい経験をするような心算ですべきものと思う。簡単な実験でも何遍も繰・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・一本のマッチをすればその光は全宇宙に瀰漫してその光圧は天体の運動に幾分の変化を生じなければならぬはずである。少なくも吾人の科学に信拠すればそうなるはずである。また全天体の片隅で行われているあらゆる変化は必ず吾人の身辺にも幾分の影響を及ぼして・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・たとえ高圧水道が出来ていようが、消防船が幾台出来ていようが、おそらくそんなものは何にもなるまい。それが役に立つくらいなら、今度だって、何かあったはずである。 もし百年の後のためを考えるなら、去年くらいの地震が、三年か五年に一度ぐらいあっ・・・ 寺田寅彦 「鑢屑」
・・・それはその命題がポピュラーでそうして伝統的権威の高圧をきかせうる場合において特にはなはだしいのである。 量的というだけならば古代民族の天文学的測定ははなはだ量的なものであった。しかし彼らは実験はあまりしなかった。上記の科学の黎明期におけ・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・弟はまたそれが不愉快でたまらないのだけれども、兄が高圧的に釣竿を担がしたり、魚籃を提げさせたりして、釣堀へ随行を命ずるものだから、まあ目を瞑ってくっついて行って、気味の悪い鮒などを釣っていやいや帰ってくるのです。それがために兄の計画通り弟の・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・ 今までとは打って変って高圧的な口調で、番頭は先ず隠居が大変立腹していること。こんなに手を換え、品をかえて何か遣ろうとするのにきかないのは、何か思惑があるのじゃあないか、一旦自分で突落した若旦那をまた自分で助けて来でもして、こちらで上げ・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
出典:青空文庫