・・・ 街の並木の黄葉がきれいだそうです。[自注4]ウワバミ元気のこと――「ウワバニン」の注射のために百合子は亢奮状態におかれて結果がよくなかった。そこで「ウワバミ」という家庭のアダナがついた。 十一月二十日 〔巣鴨拘・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・そのことも自分たちの高揚した気分からだけされているのでないことは、十分察せられる。生活ということがそこでも考えられている。 刻々の推移の中で、人間らしい生活を見失うまいとする若い男女の結合が、今日の新しい結婚の相貌であるということは、日・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・しかし、作家に成長があるとすれば、畢竟はこの自身のコムプレックスと死力をつくしてもみ合って、それを最大の可能へまで昂揚拡大させ、表現してゆくその「変って」ゆく道しかないのであろうと思う。 車善六の作者が、作家として持っている複雑なコムプ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・重な反省から目を逸らさせ、真面目な再吟味の根気を失わせられたことは、それらの作家たちが過去において率直に傾け示した自身の努力、人間的善意の価値に自信を失わせる結果となり、従って、プロレタリア文学運動の高揚と退潮とに至る多岐な数年間の経験から・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・れる客観主義の否定、日本における社会生活と思想の伝統の特徴にふれて、今日のヒューマニズムの性質を明かにしようという努力にもかかわらず、あしき客観主義に対置するヒューマニスティックなものとして「主観性の昂揚」を、俗流日常主義の解毒剤として「理・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・妻の胤子が、女にあり勝の外部からの刺激に動かされ易い性質から左翼の活動に入ったが、その高揚期がすぎると失望し、生活の目当を失い、辛うじて良人と共に、感化事業に献身しようとする。しかし、事業の困難さは、耐久力のない胤子を再び失望させたのみか、・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・如何程美くしいものでも、其が彼女にとって、何等かの実際的効用を与えなければ、其は只彼女等特有の、形容詞たっぷりの讚辞を呈された許りで通り過ぎられてしまいますでしょう。 だから、買物を仕ようとしても、決して只珍らしいとか美くしいとか云う丈・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・階級の文学を、組合主義、目先の効用主義一点ばりで理解するように啓蒙されて来た人があるとすれば、その人は街の角々に貼り出されていた矢じるし目あてに機械的に歩かせられて来ていたようなものだから、一夜の大雨ですべての矢じるしが剥がれてしまったある・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ 社会主義的リアリズムの問題の提起は、ソヴェト同盟を先頭として国際的プロレタリアートの勢力がますます結集されつつあること、また、各国の広汎な大衆がプロレタリアートの革命に協力する可能性が画期的に高揚してきていることを示す深刻な事業である・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・の主張するところは、文学についての新しい社会的な理解が持ち来している、作品の世界観の問題、社会的効用の問題、形式が内容に対して従属的なもののように見られている点等を非難して、それらの束縛、圧迫から解放された新興の芸術派をうち立てようとすると・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫