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・・・本来醜美は自身の内に存するものにして、毫末も他に関係あるべからず。いやしくも我が一身の内に美ならんか、身外満目の醜美は以て我が美を軽重するに足らず。あるいはこれに反して我が身に一点の醜を包蔵せんか、満天下に無限の醜を放つものあるも、その醜は・・・
福沢諭吉
「日本男子論」
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・・・ 最早某が心に懸かり候事毫末も無之、ただただ老病にて相果て候が残念に有之、今年今月今日殊に御恩顧を蒙り候松向寺殿の十三回忌を待得候て、遅ればせに御跡を奉慕候。殉死は国家の御制禁なる事、篤と承知候えども壮年の頃相役を討ちし某が死遅れ候迄な・・・
森鴎外
「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」