・・・ある母音や子音は明瞭に出ても、たとえばSの音などはどうしても再現ができなかったそうである。その後にサムナー・テーンターやグラハム・ベルらの研究によって錫箔の代わりに蝋管を使うようになり、さらにベルリナーの発明などがあって今日のグラモフォーン・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・深山にただ一人だから行って見るまでわからなかったし、死因も全然不明であったのである。 最も大規模な測量の例としてはこんな場合もある。台湾の中央山脈を測量した時などは、蛮人百二十名巡査十五名を従え軍隊組織で行列二里にわたり、四日間の露営を・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・に相違ないだろうが、これがヒチリキの子音転換とも見られるのがおもしろい。またポーランドのピスチャルカと称するものは六孔の縦吹きのした笛であるが、この品物自身もその名前とともにヒチリキに類するのが不思議である。 南洋のソロモン群島中のある・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・ たとえば子音転訛の方則のごときでも、独断的の考えを捨てて、可能なるものの中から甲乙丙……等の作業仮定を設けて、これらにそれぞれ相当するPを算出し、また一方この仮定による実際の比較統計の符合の率を算出し、この両者を比較して、その結果から・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・ 死因がわからない。しかしたぶんこうではないかと思われた。夏じゅうは昼間に暖まった甕の水が夜間の放熱で表面から冷え、冷えた水は重くなって沈むのでいわゆる対流が起こる。そのおかげで水が表面から底まで静かにかき回され、冷却されると同時に底の・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・例えば時代や、季節や、人間の階級や、死因や、そういう標識に従って類別すれば現われ得べき曲線上の隆起が、各類によって位置を異にしたりするために、すべてを重ね合すことによって消失するのではあるまいか。 このような空想に耽ってみたが、結局は統・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
出典:青空文庫