-
・・・ この傾向を焦点として見れば、彼らは享楽のほかに生活を持っていない。彼らはともに全身をもって、全生活をもって享楽しようとする。彼らは内面外面のあらゆる道徳を振り捨てて人の恐れる「底」に沈淪する事を喜ぶ。聖人が悪とする所は彼らには善である・・・
和辻哲郎
「転向」
-
・・・顔面は人の表情の焦点であり、自然的な顔面の把捉は必ずこの表情に即しているのである。ことに能面の時代に先立つ鎌倉時代は、彫刻においても絵画においても、個性の表現の著しく発達した時代であった。その伝統を前にながめつつ、ちょうどその点を殺してかか・・・
和辻哲郎
「能面の様式」