・・・同時に、日本海をこえて来る資本主義、帝国主義を、この海岸から清掃しようとしている。かつてウラジヴォストクからコルチャック軍と一緒にプロレタリアートのソヴェト・ロシア揉潰しを試みて成功しなかった日本帝国主義軍、自覚のない、動員された日本プロレ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・大ニコニコで、盛んに社会的清掃をつづけながら遠ざかった。 自動車工場「アモ」のデモは別の趣好だ。幾流もの横旗の上に小さい自動車が一台ゆれてくる。みんなの目の前でパラリとそれがひらく。生産経済計画を百パーセントに! はすか・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・「上海」を意味深い転期として、いわゆる「流行」にまけることを潔しとせず、プロレタリア文学に反撥する強力な緊張で「寝園」「盛装」に到る境地を築き上げて来た。彼の見事さというものは、謂わば危くも転落しそうに見える房飾つきの水盃を、百尺竿頭に保っ・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・海上にポツリと浮いたお台場、青草、太陽に照っている休息所の小さなテント。此方ではカフェー・パリスと赤旗がひらひらしている。市民の遊覧、ルウソーの絵の感じであった。陽気で愛らし。 溺死人の黒い頭、肩。人間の沢山いる棧橋の方へ、何か魂の引力・・・ 宮本百合子 「狐の姐さん」
・・・ 反革命的異分子の清掃が、あらゆる部門にわたって積極的に行われはじめた。 間断なき週間制によって、五日週間を働くようになった一般勤労者は、職場職場で、生産能率増進のウダールニクを組織し、家へかえる道々には、例えばモスクワ市立銀行の屋・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・日本服の晴着でも、いくらか度はずれの大盛装が少くなかったようです。あの混む省線で、押しあい、へしあいするなかに、かんざし沢山の日本髪、吉彌結びにしごきまで下げた娘さんがまじって、もまれている姿は、場ちがいで気の毒な感じでした。 美しくあ・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・ この頃は城壁内の青草が茂って、ビザンチン式の古風な緑や茶色の尖塔はなかなか趣ある眺望だ。円屋根にひるがえる赤旗は、まわりを古風な建物がとりかこんでいるだけかえって新鮮で、光る白い雲の下で夏の歓びにあふれている。 クレムリンの城壁が・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ソヴェトが一九一七年から十二年の星霜を経て、その深刻な根本的改変と建設との成果に立って、社会主義生産の段階に到達し、生産の全面と文化の全部門から利潤追求の企業性を排除しえたとき、国内的に勤労階級と有識人階級との対立、貧農と富農との対立が消え・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・初夏の青草だ。どっから来たのかわからない水が浅くひろくその原を浸していた。水づかりの原に壊れて雨風にさらされた牧柵が立っていた。少し行ったら水かさのました川で柳があたまだけ水から出して揺れていた。 雪解け後は乾ききったモスクワから来ると・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ ある作家、編輯者はこの作に対して公に龍胆寺に挑戦をしたり、雑誌の六号記事はどれもそれにふれる有様であったが、この作品は、文壇清掃の初歩的な爆弾的効果をもはたさず、いわば作者一人の損になってしまった形で終った。 ブルジョア文壇への登・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫