・・・がないことが農村の女の向上を阻んでいるのだが、漁家の女が何とはなしその日暮しの生活の習慣に押しながされている傾きのつよいのは、漁家の生計の基礎が安定していなくて、一日一日が漁不漁に支配され、或るときは大漁と思えば次はまるで不漁という極めてむ・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・ 政府によって言明された大量馘首政策が比較的ゆるやかなテンポで行われているのも勤労階級の組織力によっておされているからです。最も退嬰的であると考えられていた教員、全逓・官公庁の職員も婦人をこめて今は前線に進んでいます。農民組合は日本全国・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・をやって支配階級の大量的殺人を援助し、ストライキを逃げ、階級意識を眠らす出征兵士慰問金をかき集める役をつとめるとしたら、果してわれわれは何事をなし得るであろうか! 地方の農村・小都市で封建性は強く日常生活の些細な感情の中にまで残っている・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ 農村の貧困は事実、一冊の雑誌さえ容易に買えない経済状態に農民をおとしいれているが、資本主義の生産はすべて大量に生産されたものが安いから雑誌でも部数を多く刷るものが比較的安く即ち同じ三十銭でうんと頁を多く、グラフまで入れて作れるという訳・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・ならいくら海辺の村でもそこに住む人間が、海へ出て漁をして生存しなければならないという必要がなければ、漁村の文化の一大特徴である船を造る技術が発達することはなかったし、絵かきや音楽家がこのんで主題とする大漁祝いの時の歌、踊り、特別な衣裳などと・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・ 女の人の寄宿舎などは、まるで、今海から上げた大漁の網そのままの活々しさでございます。踊るもの、かけるもの、キーキー云ってふざけるもの、声高に座談をなげ合うもの、命が躍って、躍って、止途もないというようなのが女の人、ことに若い人の通用性・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・一九五〇年の十月、日本全国で二十代の男女労働者の大量が、「政治的思想的立場を理由にして、つまり国の憲法と労働関係法規とに違反して首切られました」、二十代の全国の学生は、同じく「政治的思想的立場を理由にして」追放されようとしている教授を擁護し・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・女のひとの書いた本は相当どっさり出ている。大量に売れている。毎日の新聞に女性の著書の広告が出ていない日はないような有様だし、すこし大きい本屋ではこの頃婦人の書いた本だけ並べた場所をこしらえたりしている。文学作品も多いけれども、はっきりそうと・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
・・・十年前に労働予備軍に加った人々の生活が低下しつつある傍ら、新しい青年層の無産者化が大量に行われつつある。それ故詳しく具体的に見れば、今日の大衆の実質の中には、画期的な多量さで知識人要素が内包されて来ているわけである。大衆の質も量も、この十年・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・ アメリカは誰も知る通り大量生産だ。ソヴェトもそうだ。ところで現にアメリカでは大量生産に慊きかかっているではないかというものもあって、これは非常に興味がある。併しこれはソヴェトには適用しない。何故かというと、アメリカの大量生産と、ソヴェ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫