・・・精神のたわいない移り気、柔軟性、「蚊のような彼等の痛みを観察しつつ」二十一歳になったマクシム・ゴーリキイは自分を「馬蠅の雲の中へ脚をとられた一匹の馬のように」感じるのであった。 折からカザン大学に学生の騒動が始った。パン焼の窖につめこま・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・その声が思ったより高く一間の中に響き渡ると、返事をするようにどの隅からもうめきや、寝返りの音や、長椅子のぎいぎい鳴る音や、たわいもない囈語が聞える。 フィンクは暫くぼんやり立っていた。そしてこう思った。なるほどどこにもかしこにも、もう人・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
・・・あまりにたわいがない。 彼らはまず、自分たちのとは違った自然の見方をほんとうに心底から理解してみなくてはいけない。私は彼らが性慾を重んじるからいけないというのではない。彼らが娼婦を描くからいけないというのではない。ただそういうものに対し・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫