・・・ 乏しい故の中央集権が、日本各地方の文化にそれぞれ独特な、ゆたかな展開を可能としなかった上に、一層わるいことは、その状態のまま文化面でも出版業のような利潤追求の企業はどんどん成長して行ったことである。 どんな国でも、都会人口よりは、・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・したがって、一層これ以前の時期から、野暮に正直に不遇な日本の民主精神と、平和への精神が追求される必要が痛感される。 宮本百合子 「「現代日本小説大系」刊行委員会への希望」
・・・ あなた方は、みんなお若い方たちでいらっしゃるし、毎日生きていらっしゃる限り希望というものを、どこかに追求していらっしゃる。家庭で食べもののこまかいことをいう時もございましょうけれども究極するところは、やっぱり幸福に生きて、幸福に働いて・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・女のひとが、特に幸福というものを何か波瀾のそとのもの、悲しみの外のものと固定させた形で追求していることについて疑問が生じたとき、私の心にひきつづいて起った問いはそれであった。女のひとはどんなに文学を読むのだろうか、と。何故なら本当のいい文学・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・ 中川が金のことで自分を追及しはじめて間もなく、主任がこんなことを云った。「ああ、そう云えばあなたの家でつかまった帝大生、ここにいる間は珍しい位確りしていたが到頭兜をぬいだそうだよ」 自分は冷淡に、「ふーん」と云った。・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・その後東宝経営者は、興業資本の利潤追及の方向を強化して、保守的な文化性の低いスター中心に作った第二組合に、安価なエロ・グロ・剣劇映画を作らせ第一組合を無活動におとしいれ数百名のくびきりを行った。 輸入映画が国外の興業資本によって日本の文・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・戦争責任追及の公判で、却って東條に人気が出たなどということは、ヨーロッパのどの国にもない例である。日本が負けたのだけがわるくて、戦争したことそのものはわるくなかったというような考えかたが復活し、通用するとしたら、今日生きることさえむずかしく・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・そのうち文化上の戦争責任追及もうやむやになったし、日本の保守傾向の存在できる幅のひろさも見えはじめたことから、頼んでいる人自身が尊敬もしていない、けれどなにしろ読む人がいるのだから、と書かせる。そういうことでジャーナリズムに作家たちがずるず・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 日本の人民生活を、今日の惨苦につき入れ、戦場へやられた一人一人が平和の生活では思いもかけなかった残虐行為を行うようにしむけられたことに対して、日本の人民の戦争責任者追及は、むしろ寛大すぎるとさえいえる。二十万人の戦傷不具者・二十万人以・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・の登場の今日の必然は、彼等の存在が今や無視出来ないほどの重要性を持ち、作家をして書かずにはいられなくさせていること、同時に近頃の小説が一方で従来の繊細な内的追及に没頭している他の一方では、これまでの文学の心情と全く縁のない、別の生の発展に興・・・ 宮本百合子 「文学のディフォーメイションに就て」
出典:青空文庫